アーティストを目指している人は、たいてい一人前になる過程で一見無駄に見える時間を過ごしています。
空いている時間でバイトでもすればいいのに働かないとか、本ばっかり読んでる、本業と全然違うことをやってる…などなど。
しかし、得てしてそういう時間がアーティストを育てていることが多いのです。
僕もそうでした(僕は最終的にアーティストとは違う立ち位置に落ち着きましたが)。
僕の場合はとにかく時間さえあれば本を読んだり何かを勉強したりしていましたが、最終的にそれが仕事になるまで昇華されました。
まあ偶然と言えば偶然ですが、なんとなくいつか役に立つとも思っていました。
こういう行動は端から見ると理解不可能でしょう。
僕も以前仲の良い人から「なんでバイトしないの?」と本気でキレられたことがあります。
確か当時は実家暮らしで仕事は全然ありませんでしたが、バイトはせず空いた時間はずっと本を読んでいました。
なんとなく、今この時間で読書をすることが自分にとって大事だと思っていたからです。
結局その友人(アーティスト志望ではない)は怒って離れていきましたが、今考えてみると自分の方が正しかったようです。
あのとき忠告を聞いて、バイトして中途半端に自立してたら今はないと断言できます。
僕からすれば当時バイトせずに本を読むことは大事な将来設計だったのですが、端から見れば意味不明だったのでしょう。
そういえばあのとき「みんな自立して頑張ってるのに…」と言われて『みんなが自立してるからってなんで俺も自立しなきゃならないんだ?』と本気で疑問に思ったことを覚えています。
今思えばあのときから、一般の人とはもう相容れないんだなーと覚悟しはじめました。
上記の友達と同じ立場にいる人、つまり、自分は芸術とは無関係なところで自立した生活をしていて、家族や友人がアーティストを目指しているという場合、彼/彼女が一見無駄に見える時間を過ごしているように見えても、できるだけ待ってあげましょう。
空いてる時間バイトできるよね?
この歳ならもう自立してないと…
それって本業と関係ないよね??
確かにそれは正論です。
ただ、その正論はあくまで一般社会の正論で、アーティストの場合は逆に働く場合もあります。
あとちょっとのところで何かが生まれそう、何かを掴めそう、そこまで来てるのに正論に潰されたという人はかなりいるでしょう。
働かなくて好きなことばっかしてるのは、ただ単にクズなだけかもしれません。
しかし、アーティストを目指している友人、恋人、家族にちょっとでも何かを感じたのなら、早々と結論を出さずに寛大な心で待ってあげましょう。
その時間で一人のアーティストが世に生まれる可能性があるのです。
逆にアーティストを目指している人は、正論吐かれたぐらいでへこたれないようにしましょう。
正直、「いい歳して…」と白い目をされたぐらいでドキっとしているようじゃアーティストにはなれないでしょう。
禅語に「親をコロし、仏をコロし……はじめて解脱を得ん」とあるように、正論で自分を潰そうとしてくる人は親だろうが友達だろうが恋人だろうが縁を切るぐらいの覚悟がないとやっていけません。
僕自身もそうやって縁を切った人、離れていった人がいっぱいいますが、後悔はしていません。
もちろん、芸術よりも家族や恋人が大事だと悟ったのならそれはそれで素晴らしいことなのですが。