ある身体操作の専門家が、ミュージシャンを集めた講習で「腱鞘炎になる人はプロ失格」と言っていました。
その先生はミュージシャンでもなく、おそらく楽器もできない人です。
その人には元々興味はあったんですが、この言葉を聞いて心底がっかりしました(まあそれ以前に実際に習った人から話を聞いていて別のところでがっかりもしていたんですが)。
それにしても、腱鞘炎になる人はプロ失格でしょうか?
僕はそうは思いません。
そもそも、プロの人はたいてい体のどこかに爆弾を抱えています。
腕、腰、首、肩などなど。
五体満足でどこも悪くないよと豪語する人も、本人が知らないだけで爆発する寸前まで凝っていることもよくあります。
また、表向きには大丈夫なふりをしておいて、実は整体や鍼に通っているという人もいます。
もちろん、世界的プロミュージシャンで腱鞘炎になった人もたくさんいます。
極論すれば、それぐらいやってないとプロにはなれません。
もちろんそれと同時に、きちんとケアをしておかないとプロ活動を維持できません。
ただ、ミュージシャンの世界ではそのきちんとしたケアがまだまだ浸透していないとうのが現状です。
そういったミュージシャンの実情を知っていれば「腱鞘炎になる人はプロ失格」などと簡単に口にはできないと思うのですが……。
その先生以外にも、ミュージシャンでもないのに身体が使えるというだけでミュージシャンに教えている人はよくいるそうです。
例えば、元サッカー選手のトレーナーが野球選手や陸上選手を教えるというのはわかります。
競技として野球や陸上の経験がなくても、アスリートとして相通ずるものが必ずあるはずです。
しかし、楽器も身体操作だといっても、楽器の経験すらない人がミュージシャンに教えるのはやはり筋違いでしょう。
確かに身体操作としての楽器の操作は予想ぐらいはつくのでしょうが、ではサウンドは?タイムは?グルーヴは?となると絶対にわからないはずです。
もしそういうところに習いにいくなら、ヒントを掴みにいくぐらいのつもりで参加してみるのがいいと思います。