横浜ギター教室の生徒さんから「ジャズギター入門として最適なアルバムは?」とよく訊かれるのですが、だいたいケニー・バレルの「Midnight Blue」と答えています。

- アーティスト: Kenny Burrell,Ray Barretto
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 1999/02/04
- メディア: CD
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まあだいたいの人は気に入ってくれるのですが、中にはそこまでジャズジャズしたものを求めていない人もいます。
そういう人には何がいいかなーとずっと考えてきたのですが、最近ようやく答えが出ました。
おそらくジョージ・ベンソンの「BREEZIN'」が最適でしょう。

- アーティスト: George Benson
- 出版社/メーカー: Warner Bros / Wea
- 発売日: 1994/08/22
- メディア: CD
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ジョージ・ベンソンという人をざっくり説明すると、ビバップ黄金期にギタリストとして活躍し、その後ジャズが廃れてからはポップシンガー、スムースジャズギタリストとして華麗に転身した人です。
その転身の上手さ(世渡り上手なところ)がコアなジャズファンの反感を買い、批判的に見る人もいましたが、現在ではジャズシンガー、ポップシンガー、ジャズギタリスト、スムースジャズギタリストとして超一流という認識が定着しています。
余談ですが、僕の音大時代の師匠の師匠がベンソン氏なので、僕は孫弟子にあたりますw
さて、ではこのアルバムがジャズギター入門にいい理由を挙げておきます。
ベンソン自身元々王道的なバップギタリストです。
だから本アルバムにもそのテイスト(フレージング、サウンド)はしっかり出ています。
しかもそれは、ロック寄りのフュージョンギタリストがジャズっぽいアプローチをしたときのあの白々しい感じではなく、どジャズのギタリストがセールスのためにジャズ臭を一生懸命消そうとしてるけどどうしても消えないジャズの臭いがにじみ出ているので、”ジャズテイスト”の重みが違います。
このアルバムをカテゴライズするとすれば「ポップギターアルバム」と言うのが一番しっくりくるでしょう。
そこまでジャズでもなく、かといって完全にポップでもなく、ちょうどいいところに収まっています。
全体的にとても聴きやすいし、コピーもしやすいです。
本作はディスコやファンクっぽいリズムの楽曲で構成されていますが、どれもグルーヴがきつすぎず、しかしはっきりと黒人的で、ブラックミュージックに興味があるけど独特のアクの強さが苦手という人でもすんなり聴けると思います。
これもおそらくセールスのためにそうしたのでしょう。
本作にはインスト5曲に1曲だけ歌ものの「This Masquerade」が入っていますが、これがまたとても美しいバラードで、スタンダードにもなっています。
この曲だけで言うとかなりジャズテイストが強いですが、サラサラしているので普通のポップバラードとしても聴けます。
歌手ジョージ・ベンソンの真骨頂が堪能できます。
ソロを聴いていると、時折荒くなるところがあります。
近年の音楽や、テクニカルなものに慣れている人からすると「え?」と思うかもしれませんが、実はそこが一番ジャズテイストなのです。
本アルバムでそうした荒さに耳を慣らしておいてからバップを聴くと入っていきやすいのではないかと思います。
最後に注意してほしいのは、本作はジャズでもないしバップでもないということです。
一方、いわゆるフュージョンかというと、それもちょっと違います。
ポップで聴きやすいギターアルバムの中に本物のジャズギターテイストが入っているというところがポイントです。
だからどジャズやバップが聴きたい人はスルーしてください。
本作はあくまで「バップはまだちょっと…」「黒人のグルーヴはきつすぎてしんどい」「でもジャズギターに興味がある」という人のための入門用アルバムです。