アドリブと同様、ジャズをジャズたらしめている要素がもう一つあります。
それがスイング(swing)です。
スイングとは単純に言うとリズムの一形態のことで、よく「ウキウキするようなリズム」とか、「跳ねる感じ」などと言われます。
また、ジャズは難しい音楽じゃないという人たちがよく「スイングを体で感じればいいだけ」と無責任に言ったりもしますが、そもそもこのスイングを感じること自体日本人には容易ではありません。
日本人にはリズムに乗ってダンスするという習慣がないので、「体で感じろ」と言ったところでできるわけがないのです。
スイングは普段から聞き慣れたロックの8ビートやファンクなどの16ビート、またEDM系の4つ打ちとは全く性質が違います。
もちろん、シャッフルとも違います。
日本人にとってスイングは、「これこれこういうものですよ」と改まって勉強しないと理解できないものなのです。
僕がジャズミュージシャンをやっていたとき、ジャズ歴20年だか30年でジャズバーを経営している人のお店で演奏したことがありますが、その人は間違いなくスイングが全く体感できない人でした。
あんまりわかってないとか、理解が甘いといったレベルではなく、文字通り全くわかっていませんでした。
だから話が全然かみ合わず苦労しました。
また、ジャズミュージシャンでも、特に海外での演奏経験がない(少ない)人はあまりスイングを体感できていないケースが多いです。
某人気ジャズミュージシャンは、実は業界では全然スイングしないことで有名で、他のミュージシャンから「あいつはスイングしないから共演したくない」と陰口をたたかれている場面を何度も見たことがあります。
それでも日本のジャズ界では人気があり、仕事もたくさんあります。
このように、スイングは楽器をやっているからできるものでもないし、長年ジャズを聴いていれば体感できるということもありません。
特に我々日本人にはスイングは相当難しいリズムなのです。
それを「感じるだけ」と単純化し、初心者に丸投げするのは無責任でしょう。
スイングが感じられるようになった人、スイングして演奏できるようになった人、そんなに簡単に習得できましたか??
そんなことはないでしょう。
プレイヤーはともかく、教える立場の人は後進がスイングを理解できるよう、少しぐらい手がかりになるものを残しておくべきです。
ということで、ここからはしばらくスイングについて解説していきます。