ジャズをはじめたとき、スイングとはドラムが演奏する「チーンチキ・チーンチキ」というシンバルのパターンのことだと教わりました。
確かに、これはジャズ特有のパターンでロックでもポップスでもボサノバでも使われません(ジャズテイストを加えるためにあえて部分的に使うこともありますが)。
しかしこの教えは完全なる間違いでした。
なぜかというと、「チーンチキ・チーンチキ」というパターンをロックドラマーが演奏してもスイングしないからです。
逆に、スイングしている人(スイング感覚を身につけた人)なら概ねどんなパターンを演奏してもスイングします。
そう、スイングとはパターンのことではなく、これさえ使えばスイングする=ジャズになるというフレーズやパターンはどこにもないのです。
逆に、スイングの感覚を持っているミュージシャンなら何をやってもスイングします。
ではスイングとはどういう感覚か?
これはまずシャッフルという跳ねたリズムを基準として考えると分かりやすくなります。
シャッフルとは「タッカ・タッカ・タッカ・タッカ」という飛び跳ねるようなリズムです。
例えばFreddie KingのHideawayというギターインストの曲はシャッフルのリズムで演奏されています(途中少しリズムが変わりますが)。
オリジナルはフレディ・キングですが、エリック・クラプトンの演奏でも有名です。
聴いてみれば「タッカ・タッカ・タッカ・タッカ」というリズムの感じは分かると思います。
ちなみに曲に合わせて手拍子をしたとき、手拍子1回につき1「タッカ」です。
スイングはこの「タ」と「カ」の間を伸ばし、「ターカ・ターカ・ターカ・ターカ」という感じになります。
シャッフルよりはもう少し落ち着き、地面をしっかりと歩いているような雰囲気になります。
実際ジャズのベースラインはウォーキングとも呼ばれます。
例えばJohn Coltraneの「Blue Train」という曲を聴いてみてください。
短いテーマが終わった後、41秒あたりからソロに入ります。
そこで手拍子をしながら「タッカ・タッカ・タッカ・タッカ」と「ターカ・ターカ・ターカ・ターカ」の両方を歌ってみるとなんとなく分かると思います。
「タッカ・タッカ・タッカ・タッカ」ではなく「ターカ・ターカ・ターカ・ターカ」の方が演奏に合うのが体感できるはずです。
ベースに合わせて歌ってみるとより分かると思います。
とりあえず、スイングがいまいち分からないという人は、いろんなジャズの楽曲でこの「ターカ・ターカ・ターカ・ターカ」を感じることからはじめてみましょう。
ただひとつ気をつけてほしいのは、ジャズではいろんなタイプのリズムを使って演奏するので、ジャズの定番といわれるアルバムでもスイングと全く違うリズムで演奏しているケースが多々あるということです。
また、楽曲のあるセクションだけあえてスイングしない場合もあります。
あと、楽曲のテンポが異常に早かったり、ゆっくりのバラードだったりするとスイングを体感し辛くなります。
とりあえずスイングを体感したいという方はコルトレーンの上記の曲を何度も聞いてみましょう。
ちなみにこのアルバムは、バラード以外はどれもスイング感がわかりやすいので、まだ持っていない人はこの機会に手に入れておくといいでしょう。
ジャズの名盤中の名盤ですし、メンバーは超一流。
20年聴いても厭きません。