ずっと言っていますが、アドリブで最初に学んでおくべきことは、スケールやフレーズ、アウトなどではなく、それが「対人技法」であるということです。
音楽を通して人とどう関わるかというのがアドリブの唯一の目的といってもよく、しかもそれはわりと簡単で効果も絶大です。
考え方はシンプルです。
自分が何かを弾くとき「それを弾いたら他のプレイヤーがどう反応するか」を考える、というだけです。
例えば、会話を想像してみましょう。
自分が誰かに話しかけるとき、言っていいことと悪いことを先に選別しているはずです。
また、場が盛り下がるような発言は控えようとするでしょう。
それは、会話というものが対人技法だからです。
他人や場のことを考えず、自分がいいたいことだけをまくしたてる人は誰にも相手にされなくなりますよね。
では(音楽の)アドリブではどうでしょうか?
一般的なアドリブの学び方は、スケールやフレーズを覚え、それらをコードに当てはめて使っていくといったものです。
新しいことを覚えたらまたそれをアドリブに組み込んでどんどん使っていく。
これらは、どこまでいっても「自分が何を言うか」でしかありません。
それをやったら他人(他のプレイヤー)はどう感じるか、どうリアクションするかという最重要問題がすっぽり抜け落ちています。。
だから自分の意見をただ言うだけ、みんなの前で独り言を言うだけのアドリブになってしまうのです。
当然、一般の人はそれを観て楽しいと思わないので、アドリブ主体の音楽はなかなか一般受けしません。
だから、フレーズを覚えたらただ弾くというだけではなく、それを弾いたときに何が起こるのか(起こらないのか)まできちんと理解するべきです。
そこまでがプレイヤーの責任です。
ただ、そのためには人と合わせないといけません。
僕がDTMやマイナスワンでの練習に否定的なのはそこです。
コンピュータは絶対に反応してくれません。
その分、独り言の練習には適していますが、(音楽での)会話の練習としては全く役に立たないといっていいでしょう。
DTMと合わせているのも楽しいと感じる人は、アドリブを対人技法として捉えていないのでしょう。
アドリブをする際に、「これをやったらドラムはどう反応するだろう?」「バッキングは何を弾いてくるのだろう」とちゃんと人を想定していると、実際に人と合わせてみたくなります。
そうなれば、セッションなどを行い、実際に人の反応を見て、修正し、またセッションで試し…といういいサイクルに乗ることができます。
アドリブを学んでいる人は、まず独り言としてのソロ、自分がそうしたいだけのソロをやめましょう。
既に人と合わせている人は、自分がどう弾けたかだけを考えるのではなく、自分が演奏しているときに何が起こっているのか、起こっていないのか、自分が何かを仕掛けたときにきちんと他のメンバーに伝わっていたか、などを考えてみましょう。
そこを第一義として捉えていると、必ずうまくいくと僕は考えます。