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はじめてのジャズ49 フレーズを「拾う」という概念を知ろう


八幡謙介ギター教室in横浜

ジャズのアドリブでは、一見自由に音を紡いでいるようでいて、実はわりとよくフレーズの繰り返しが行われています。

ただ、ポップスとかロックのような分かりやすいリフになっていないので、相当年季の入ったジャズファンでも意外と聴けていなかったりします。

また、かなりジャズが弾ける人でも意外とこうした繰り返しについては考えたことがなかったり、意識して弾いたことがないケースが多いようです。

まあさすがにプロなら知っているでしょうが、その辺はリサーチしたことがないのではっきりとは断言できません。

 

僕はジャズにおけるこうした繰り返しを「拾う」と言います。

本当にはじめての初心者ではまだ「拾う」ことができないので、準備したフレーズを「繰り返す」になりますが、ある程度アドリブができてきたら「拾う」に移行します。

 

 

そもそもアドリブとは即興で自由にフレーズを紡いでいく行為です。

ですから、本来は何を弾いても構いません。

しかし実際はひとつフレーズを弾いて、次はそれと関係性のない新しいフレーズを弾いて、また次は新しいフレーズを弾いて……を延々繰り返していくと脈絡のない音の羅列に聞こえ、聞いていても共演してもつまらない演奏になります。

ですので、適度にフレーズを繰り返す必要があります。

しかしここでジャズ独特の問題が発生します。

それは、狙い澄ますとアドリブ感が減退し、ジャズっぽく聞こえないということです。

いかにも『これを練習してきました!』『ここでこれを出すんだ!』というように弾くと、アドリブに聞こえず、聞いていて(共演していて)なんか萎えてしまうのです。

アドリブが散漫にならないようにフレーズを繰り返し使いたい、でも狙い澄ましたようには弾きたくない……、そこでフレーズを「拾う」という概念が出てきます。 

 

 

アドリブで音を「拾う」ためには、フレーズに対するアプローチを知る必要があります。

 

アドリブをする際、フレーズに対してざっくり二種類の考え方があります。

 

  • 捨てる

  今弾いたフレーズを捨てて新しいフレーズを弾く

  • 拾う

  今弾いたフレーズを拾って繰り返す、あるいは発展させる

 

もちろん細かく分ければもっといろんなアプローチがありますが、ざっくりだと上記二種類になります。

そして、初心者から中級者は基本的にフレーズを捨てることしかできず、拾うことがほとんど(全く)ありません。

だから燃費が悪く、すぐフレーズが枯渇したり、あれこれ弾けるけどまとまりがなく散漫になってしまいます。

 

フレーズを捨てるのは誰でも理解できると思います。

何かを弾いて、次のそれと違う(似ていてもいいけど)別のフレーズを弾くことです。

では即興の中で「拾う」とは具体的にどういう仕組みで成り立つのでしょうか?

 

 

まず何かのフレーズを弾きます。

この時点では特に何も考えていません。

そして、フレーズを弾いている最中、あるいは弾き終わった瞬間に、そのフレーズを拾うか捨てるかの選択をします。

そして、「拾う」と決めたらさっき弾いたフレーズ(今弾いているフレーズ)をもう一回繰り返します(全く同じにするか、ちょっと変化させるかはケースバイケースですが)。

基本的にこれを繰り返すだけです。

大事なのは、フレーズを弾く前に「拾う」ことを決めておかないことです。

それをするとかっちり感が出てアドリブっぽく聞こえなくなってしまいます。

あくまでフレーズを弾いている最中、あるいは弾き終わった瞬間に決定します。

そうするとアドリブ感が出たままでフレーズが繰り返されるので、緊張感の中に安定感が生まれ、聞きやすさも増します。

 

具体的にどうやっていくか、拾い方の派生などは実際に教えないと分からないので、ここでの説明はこれまでとし、以下、フレーズを「拾う」を実際に行っている例をご紹介します。 

Sonny Rollins「St. Thomas」
SAXOPHONE COLOSSUS

SAXOPHONE COLOSSUS

 

こちらのアルバムの一曲目。

まず、ソロの頭で「バボッ」とフレーズとも言えない変な音で始まります。

たぶん、なんか知らんけどそんな音が出たのでしょう。

もちろんこれ自体アドリブです。

それを拾い、怒濤のように繰り返していきます。

途中ジャズらしいラインに移行しますが、2コーラス目でまた「バボッ」に戻ってきます。

中盤から離れていき、『バボッに厭きたのかな』と思いきや、コーラス終わりでまた「ンバボバボ」と拾ってバボ期が終了します。

それ以降はまた違うアプローチをしているので、3コーラス目からは「バボッ」を捨てるという選択肢を取ったのでしょう。

10代の頃、この演奏が名演だと薦められたので聞いてみたんですが、『なんかバボバボいって変なソロだなー』ぐらいにしか思えませんでしたが、40を過ぎた今ではフレーズの拾い方、その後の構築の仕方、拾ったフレーズへの責任の取り方など、どれをとっても名人芸だとほとほと感心します。

やはりジャズは難しいなと改めて思いますが、その難しさを噛み砕いてこのように教えることが僕の役割かなと認識しています。

 

 

Hank Mobley「Soul Station」
Soul Station

Soul Station

  • アーティスト:Mobley, Hank
  • 発売日: 1999/03/17
  • メディア: CD
 

本ブログで何度も取り上げているのでお持ちの方も多いと思います。

一曲目「Soul Station」でもアドリブの頭からフレーズを拾って繰り替えすアプローチが採用されています(46秒あたりから)。

ロリンズほどスリリングではありませんが、メロディックで聞きやすく、それでいて狙い澄ました感のない絶妙なフレーズが心地良いです。

ハンク・モブレーの場合は、ソロ中何度もフレーズを拾っていますが、繰り返しはやや短かく、ロリンズほど大きな絵で構築しません。

そのためフレーズを拾っていることに気づかない人もいるでしょう。

注意して聞いてみてください。 

各プレイヤーの拾い方の癖を知ろう

上記ではかなり分かりやすいフレーズの拾い方をご紹介しましたが、これ以外にもいろんなプレイヤーがいろんな演奏で「拾う」を実践しています。

単純に繰り返す人、繰り返しがしつこいくらい長い人、拾ったフレーズを大きな絵で構築する人、伏線のように後で拾うひと、拾いながら崩していく人……プレイヤーによって拾い方の癖が全然違っています。

それらを聴き比べてみると今までと違った角度からジャズを楽しめます。

また、アドリブに取り入れると新しい世界が広がります。

詳しいことは横浜ギター教室にて。

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