日本人は概ね、安定的なアドリブスキルの習得を目指します。
そして、それが習得できたときどうなるか?ということを書いておきます。
安定的なアドリブスキルが習得できた際、音楽から人間が消えます。
熱気や、情熱や、エネルギー、また、一生懸命さ、あるいはバチバチ火花が散る感じ、さらに表情までも消えていき音楽全体が淡々としてきます。
そう、ほとんどのジャズの演奏で感じる、あの冷めた印象、やる気なさそうな感じ、流れ作業感は、安定したアドリブスキルから生じたものなのです。
人は怠ける生き物です。
100%の力を出さなくてもできることに、わざわざ100%(あるいはそれ以上)の力を出そうとはしません。
それぞれの仕事を思い返してみてください。
小手先でできる簡単な仕事にいちいち全エネルギーをそそがないですよね?
そういった仕事をするときは、できるだけ力をセーブして、疲れないようにするはずです。
ミュージシャンも同じです。
アドリブスキルが安定し、80%の力で消化できる場面では80%しか出しません。
もっと安定し50%の力でできるようになると、今度は50%の力しか出しそうとしなくなります(というか、出せなくなります)。
『いや、それはミュージシャンの意識の問題だろ?』と思うかもしれませんが、問題はそれほど簡単ではありません。
人は本能的に力をセーブしようとするのです。
そうして、安定したアドリブスキルを獲得してしまうと、いつしか100%の力の出し方を忘れてしまうのです。
その結果、アドリブから人間が消え、淡々とした冷たい流れ作業になってしまいます。
「いや、俺のアドリブは熱いぜ!」と言っても無駄です。
観客からはそう見えてはいませんから……。
ジャズよりロックに人が集まるのは、単にロックの方が熱いからです。
だって彼らは概ね全力でやってますからね。
だから人間が出るんです。
音楽ファンが見たいのはそれです、決して小手先の安定的なアドリブではありません。
熱気のあるアドリブを獲得したい、取り戻したいという方は、とりあえず「安定」を捨てることからはじめましょう。
これは技術ではなく心の修行です。
まずとっかかりとして、上手いと言われたいという気持ちを捨てないといけないので、ここでほとんどの人が脱落すると思います。
また、スタイルを変えて仕事が来なくなったらどうしよう?という不安もあるでしょう。
しかし、そういった幼稚な心をひとつひとつ捨てていくと、いつからかつまらなくなったアドリブに、ちょっとだけ熱が出てきます。
ではアドリブを安定させない具体的な方法は?
それはまだ企業秘密です。
レッスンではもうやっているので、興味ある方は一度お越しください。