ギターレッスンをしていて不思議なのが、音楽が好きで好きでしょうがないといった人の方が意外と楽器が上達しないということです。
一見矛盾しているかもしれませんが、これにはちゃんと答えがあります。
音楽が好きな人ほどリスナー感覚が強いため、リスナー状態で楽器をプレイしようとするから弾けないのです。
楽器の発音に対してプレイヤー的時間と、リスナー的時間があり、プレイヤーになるためにはプレイヤー的時間に立たないといけないということです。
以下詳しく説明しましょう。
例えばある楽曲をライブで演奏しているとしましょう。
そうすると、バンドとリスナーは音楽に対して同じ時間を共有しているように見えますよね?
実は違います。
プレイヤーとリスナーは、発音に対して異なる時間に立っています。
単純に言うと、プレイヤーは発音の前、リスナーは発音の後です。
図にするとだいたいこんな感じ。
プレイヤーは音を正しいタイミングで発音するために、その音を発音する前に自分の中で処理します。
そして発音された瞬間にはもう次の音を処理しはじめています。
つまり、音よりも常に前にいるのがプレイヤーです。
一方リスナーは、プレイヤーが発音した音を認識して楽しみます。
つまり、リスナーは音の後に存在しているということです。
このように、プレイヤーとリスナーで音を認識する時間に微妙なズレが存在しているのです。
もちろん、実際は1/100~1/1000秒単位の誤差なのでほぼに感じられますが、リスナー側からプレイヤー側に回ったとき、この誤差をしっかりと修正しないとまともな演奏になりません。
例えばCというコードを弾くとしたら、弾くタイミングの少し前に『次のコードはCで、ここのポジションで、こういうストロークで弾く』という情報を完全に把握し、後はジャストなタイミングで弾くだけという状態でいなくては楽器の演奏は成立しません。
しかし、リスナー的なマインドで音を認識しようとすると、どうしても発音された後の音を聴こうとしてしまいます。
自分がこれから弾くのに、発音された後の音を聴こうとする矛盾、これがリスナー状態で楽器を弾くということです。
この意識で楽器を弾こうとするのはかなり無理があります。
ですので、楽器を演奏するときはちゃんとプレイヤー的な時間に立って演奏するよう切り替える必要があるのですが、音楽を聴くことが好きな人はなかなかその切り替えができません。
というか、この時間のズレや、そこに修正が必要だということすら知らない人がほとんどでしょう。
では楽器が上手な人やプロはどうしているのか?
詳しくは分かりませんが、演奏するときと聴くときで、自分が立つ時間を切り替えているのは間違いないでしょう。
でないとまともに演奏することはできないので。
音楽が好きで楽器を一生懸命練習してるのになかなか上達しないという人は、こういったところも考えてみてください。