八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

ミュージシャン必読! 頭の中の音を整理するための睡眠法 


八幡謙介ギター教室in横浜

数ヶ月前、学生時代から教室に通いはじめ、卒業後順調にプロ活動をしていた生徒さんが過労で入院されました。

その後退院しまた教室に来てくれたのですが、話を聞いているとあまりにも働き過ぎ、脳を使い過ぎであることが判明したので、頭の中の音を整理し、音楽活動でため込んだ疲れを取るための睡眠法を教えました。

すると翌週レッスンに来て「めちゃくちゃ疲れが取れるようになって、仕事がはかどっています、体調もいいです」と報告してくれました。

人がやっても効くんだと分かったので、ここで公開しておきます。

「ミュージシャンのための」としていますが、他のジャンルや一般職の方にも当てはまると思うので、各々でアレンジして実践してみてください。

また、ここで言う「ミュージシャン」とは、比較的ガチで音楽をやっている人のことです。

プロ/アマは関係ありません。

 

前提

ミュージシャンのほとんどは、よっぽど自覚的にオフを取らないかぎり、365日音楽漬けになっていることでしょう。

ただでさえいろんな音楽を聴きまくってインプットしている状態で、楽器の練習、リハーサル、本番などを日々こなしていることと思います。

このように、ミュージシャンの頭の中は常に音がパンパンに詰まってパンクしている状態です。

これが疲れの原因となります。

仮に疲れを実感していなくても、実際には疲れが溜まっていると思っていいでしょう(上記の生徒さんもそうでした)。

「自分は全然疲れてない」と思う人は、一度でいいから以下の睡眠法をとってみてください。

たぶん疲れていたことが分かると思います。

目的

この睡眠法の目的は、毎日音楽漬けで脳に詰まりに詰まった情報を上手に処理し、脳に休息できる余裕を与え、翌日に持ち越さないようにすることです。

つまり、脳を休めるための睡眠ということです。

私見ですが、体なんてものはちゃんと栄養を摂ってちょっと横になってりゃすぐに回復します。

問題は脳です。

脳はちゃんと手続きを踏んであげないとなかなか休んでくれません。

だからちゃんとした手続きが必要なのです。

睡眠時間

睡眠と言えばよく時間で計ることが多いのですが、個人的にはそんなに重要視していません。

どうしても5時間しか睡眠時間が取れない人は5時間でもいいし、8時間たっぷり寝られるという人はそれでいいです。

また、後に就寝前30分間のルーティンをお教えしますが、仮に5時間しか寝られないとしても睡眠時間を削ってこの30分のルーティンをやる意味はあります。

睡眠は時間ではなく質なので。

質の悪い5時間の睡眠より、質のいい4時間半の睡眠の方が絶対に効果があります。

 

睡眠へのルーティン① 2時間前

まず、就寝時刻のだいたい2時間前から音楽を消し、楽器もさらわないようにしましょう。

ミュージシャンは音から得る情報が多すぎるので、寝る前に音楽を聴いたり楽器を練習したりしていると、日中にインプットしまくった情報にさらに新たな情報が加わってしまいます。

そうなると睡眠だけではその情報を処理しきれず、翌日に持ち越しとなります。

この持ち越した情報が疲れの原因です。

 

また、ミュージシャンにとって音楽や楽器の演奏は仕事なので(プロじゃなくても気持ちはそれに近い)、これから睡眠に向かって行くという時間に脳がオンになってしまいます。

オンの状態で寝ようとしてもなかなか寝付けません。

これも私見ですが、人はオンの状態で寝ると寝ながら頭の中で何かを考えることができるようです。

この性質を利用したのがいわゆる「睡眠学習」なのでしょうが、今回は脳に情報を整理させ、しっかり休むことが目的なので、脳をしっかりオフにして眠りにつきたい。

ですので、ミュージシャンの皆さんは就寝2時間前から必ず音楽は遮断してください。

BGMも厳禁です。

もちろん寝ながら音楽を聴くなんてもってのほかです。

 

ちなみにこの「2時間」というのは目安で、人によっては90分前に音楽を切れば十分かもしれません。

1時間前だとたぶん遅すぎます。

とりあえず最初は試しに2時間前としましょう。

刺激は徐々に減らしていく

さて、音楽は遮断するとしても、まだまだ眠るまで時間があります。

その間、できるだけ刺激を減らしていきましょう。

「刺激」の内容は人によるので一概に言えませんが、個人的には読書がちょうどいいので、僕は睡眠2時間前ぐらいはだいたい本を読んでいます。

SNSや各種動画、TV、ラインのやりとりなどもできれば減らしていきましょう。

睡眠へのルーティン② 就寝30分前

され、ここからが本番です。

就寝30分前になったら、部屋の電気を暗くします。

間接照明などがあれば点けても構いません。

そして、まだベッドには入らないでください。

いつでも寝られるように準備だけしておき、ベッド以外の椅子やソファ、床などに一旦座ります。

そして、だいたい30分間じっとしてください。

既に述べたように、就寝時間が過ぎていても構いません。

睡眠時間を削ってもこれをやる意義はあります。

 

じっとしてどうするの?

当然、そう思いますよね?

ここで自律神経を副交感神経優位に切り替えます。

自律神経とは、呼吸、血圧、消化、心拍、代謝などを司る神経で、交感神経と副交感神経のふたつがあります。

このふたつが切り替わって我々の体や心が維持されています。

簡単に言うと交感神経はオン、副交感神経はオフです。

もちろん今から睡眠に入るので、自律神経をオフにして、脳をリラックスモードに切り替えてから就寝したいのです。

オンにしたまま寝ると、寝付きが悪かったり、脳が活動している状態で寝るから疲れが取れないのです。

だからきっちり副交感神経を優位にし、オフの状態で眠りにつきたい、そのためになにもせずじーっとします。

30分もそうしているとだいたいの人は副交感神経が優位になっていきます。

オンかオフかを判断するには?

では自分が今オンかオフか、交感神経優位か副交感神経優位かをどうやって判断すればいいのか?

まず、じーっとしていて『暇だなあ…』と思ったらそれはまだオンです。

暇だと感じるのは、何かやりたいからです。

何かやりたいということは、脳が活動を欲している=神経がオンになっている証拠です。

その暇な時間をなんとか我慢してじーっとしていると、だんだんどうでもよくなってきます。

「今日聞いたあの曲なんだっけ?」

「自分はなんであのフレーズが弾けないんだろう?」

「今日のリハーサルあそこが良くなかったな」

「もっとこういうサウンドが出したいのにどうやればいいのか?」

「今作ってる曲のアレンジどうしよう?」

などと浮かんでは去る思考がだんだん少なくなり、「ま、明日でいっか…めんどくさい……」と思い始めたら、それはオフに切り替わってきた証拠です。

その「めんどくさい」をしっかりと掴んでおくと、もうそこからオンになることはないでしょう。

ここで間違っても楽器を持ったり、曲を聴いたり、考え事を深めたりなどしないでください。

それをすれば一瞬で脳がオンに切り替わり、全てが台無しとなります。

疲れが実感できる

自律神経がオフになるとさらに、疲れがじわーっと出てきます。

何もかもめんどくさい、今はもういいかと思い始めた瞬間から、体の奥底から湧き上がるようなドロドロした疲れを感じはじめるはずです。

そう、それがあなたがため込んできた疲れです。

人にもよるとは思いますが、びっくりするぐらいの疲れが体を巡り始めるはずです。

これが出たらもうベッドに行って構いません。

恐らく立ち上がるとき体の重さに驚くでしょう。

体温が上がる

これは僕だけかもしれませんが、オフの状態になってくると体温が上がります。

冷え症だからでしょうか?

最初からベッドでやれば?

合理主義の人は「じゃあ最初からそのルーティングをベッドでやれば?」と思うかもしれません。

実は僕も最初そうしていました。

しかし、いきなりベッドに入ると自律神経がオンなのに寝てしまうことがあり、疲れが取れないことがよくあります。

また、きちんと自律神経をオフにしてから就寝することで「ベッド(布団)は寝るところ」と体(脳)が理解してくれるようになり、寝付きがよくなります。

まだオンの状態でベッドに入る習慣をつけていると、体(脳)が「ベッド(布団)は何か活動するところ」だと判断します。

ですから睡眠導入と睡眠それ自体をしっかり切り離す必要があるのです。

 

「よし、寝よう!」は罠

真面目に言われた通りのことをやって、「よし、寝よう!」と思っておもむろにベッドに行く場合は、残念ながらまだオンです。

本当にオフになっていたら「よし、寝よう!」とは絶対になりません。

寝るのすらめんどくさい、椅子やソファから立ち上がってベッドにいくことすら億劫に感じる……それがオフの状態です。

どうしても頭が冴えてしまう場合

一応言われた通りのルーティンを行ってはいるものの、どうしてもラスト30分であれこれ考えてしまったり、音が巡っていて頭が冴えてしまう場合、以下のことを試してみてください。

 

・明かりは薄暗く

部屋の電気を日中のように点けていたり、逆に真っ暗にするのはあまりよくありません。

明るいと活動的になってしまうし、逆に真っ暗でも意外と想像力が働いてしまうことがあります。

人間は闇に対して本能的な恐怖や不安を持っているので、そこが刺激されるのでしょう。

ですので、睡眠導入には薄暗い部屋がベストです。

その最後の明かりを消すことが睡眠へのスイッチにもなります。

 

・半眼で近くを見る

仏教で座禅や瞑想をするとき、半眼にしろと言われます(習ったことはありませんが)。

しっかり目を開けているとやはり活動的になるし、逆に目を瞑ると想像力が働いてきます(特にミュージシャンは)。

また、遠くを見るとちょっと疲れる感じがするので、できるだけ近くを見るようにします。

僕はよく膝のあたりを見ています。

 

・思考は放置する

何も考えないというのは意外と難しく、じっとしていれば必ず頭の中にあれこれ浮かんできます。

特にミュージシャンなら頭の中の音で遊んだり、メロディやアレンジを考えたり、記憶の中で音楽を再生したりと、いくらでも暇つぶしできるはずです。

そういった何かが浮かんでくると、「ダメだダメだ」と消そうとするのですが、そうなると今度は「思考(音)を消そう」という考えにとらわれます。

ですので、思考や音は放置して浮かんだままにしておきます。

ただしその思考や音をキャッチしてしまうと気が付いたらその考えを進めようとしたり、音で遊んでいたりするので、浮かんでもキャッチせずに流すようにします。

するとだんだん浮かんでくるものが減ってきます。

上手くいけば本当に何も考えない、いわゆる「無」の状態になります。

きちんとオフにして寝ると

睡眠導入が成功し、きちんとオフの状態で寝られると、寝覚めが驚くほどすっきりします。

睡眠時間は同じかやや少ないのに、頭が冴えて、疲れも取れ、朝から活動的になります。

昨日(あるいは最近)インプットした音はきちんと整理され、脳にインストールされているので、継続中の作業もサクサク進められ、新しいアイデアもポンポン出てくることでしょう。

何かを練習している人は、成果が出るようになるはずです。

クリエイターは今まで出て来なかったようなアイデアが出るようになると思います。

ぜひ一度試してみてください。

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