ゲイリー・ムーアをはじめて聴いたのはたぶん中学生の頃で、そのときからどこがいいのか全然分かりませんでした。
最近になって改めて「Still Got the Blues」を聴いてみたところ、なぜ自分が彼のギターを好きになれないのかがはっきりとわかりました。
結論から言うと、一本調子で変化がないからつまんないんです。
ロックの曲ならまだいいですが、有名なバラードの「Still Got the Blues」を聴くと、一種類のピッキングだけでずーっと弾いているので、表情がなく、感情の起伏を感じられないので(感情がないのではなく、一種類の感情しかないからつまんない)、聴いていて体がずんと重くなってき、疲れます。
一応言っておくと音はいいし、曲もいいし、歌もギターも当然上手いのですが、音楽的にいいとは僕には到底思えません。
音の奥にある弾き手の意志も感じないことはないですが、どこかドヤ感というかオラオラ感が消えていなくて、いろんな意味でメタルの人だなあと。
同じギターバラードでもジェフ・ベックの「悲しみの恋人達」とは天と地の差があります。
ベックも中学生の時から聴いてますが、こちらは最初から今までずっといいなと思っていました。
そう考えると中学生の耳も意外とあなどれないものです。
あと、ゲイリー・ムーアというと「泣き/鳴き」のギターと言われていますが、それも改めて何も感じませんでした。
「泣き/鳴き」というより、ただ大きい声を出しているだけに聞こえます。
マイナーキーのバラードで悲しみを歌った歌詞だからそう感じないといけない→それが感じられる俺スゲー……というプラシボ効果だと思います。
そもそも、「泣き/鳴き」があるんなら他にもいろんな感情が人間にはあるのになぜかそれらは話題に出ないし、音に込められた何かという点でいうと、感情よりもっと深い感覚を音に出せるマイルス・デイビスのようなアーティストがもっと取り上げられるべきでしょう。
「音と感情(精神)」というテーマなら、ゲイリー・ムーアよりもっと聴くべきアーティストがいくらでもいます。
そちらに向かわずにゲイリー・ムーアに留まっている人は、たぶん答えが用意してあるから安心しているのだと思います。
「Still Got The Blues」を聴いて鳴きがどうたら言っておけばツウっぽく振る舞えるので。
僕はもうゲイリー・ムーア聴きません。