ミュージシャン、特にブラックミュージックが好きな人なら必ず知っておくべき黒人の呼称についてお話します。
音楽だけ聴いてノリで使ってしまいそうな言葉もあるのでぜひ覚えておいてください。
わりとこれが差別用語だと思っている人がいますが、実際はそうではありません。
そもそも黒人はNegro、Coloredと呼ばれていて、そちらの方が差別的侮蔑的意味合いが強いです。
その後、60年代後半から黒人自身が誇りと尊厳を持って自らBlackという呼称を使い始めたので、黒人=Blackと呼ぶことは差別とはなりません。
ジェームス・ブラウンのドキュメンタリーでは「Black」という呼称は彼が広めたことになっていましたが、アメリカ黒人史の本にはデモ中に活動家が「Black Power」と叫んだことで急速に広まったと書いてあります。
いずれにせよ、「Black」は黒人発祥の呼称だということです。
こちらはややオフィシャルな堅い表現ですが、これも差別や侮蔑的表現にはあたりません。
あんまり日常では使わないかもしれませんね。
はい、これはアウトです。
「Black」以前の、黒人が差別や隔離されていた時代の呼称です。
日本人には馴染みがない言葉ですし、アメリカの昔の公文書で使われている呼称なのでうっかり使ってしまうかもしれませんが、気を付けましょう。
これもアウトです。
「有色人種」は日本では普通に使うので、それを英訳して「Colored」でOKのように思えますが、これも人種隔離、人種差別時代の呼称です。
70年代ぐらいまでの南部には「Colored」と看板が掲げられた有色人種専用の映画館や床屋、レストランなどがいっぱいあったそうです。
この「Colored」は黒人差別と共に白人至上主義を強くイメージさせるのでかなり複雑な意味背景を持った言葉だと僕は解釈しています。
黒人歌手の歌詞に「color」という単語が出てきた場合、そういった意味合いが強いと思われます。
これが一番NGです。
どのような状況であれ絶対に使ってはいけません。
ただややこしいのは、黒人自身が自分や自分たちのことを普通に「Nigger」と呼び合ったり歌詞にしていることです。
なんでそんなことをするかというと、言葉を逆の意味で使うという黒人独特の文化から来ているのでしょう。
例えば黒人英語では「bad」は「いい」「格好いい」という意味で使われます。
現代日本語でいう「ヤバい」に近い感じだと言えば分かるでしょうか。
それと同じで黒人の蔑称であるNiggerをわざわざ自分たちで使っているのです。
ただしこれは黒人同士、それも同じコミュニティや同じ地位、同じノリの人同士でしか使われません。
ギャングスタ-ラッパーでも目上の人(黒人)にはNIggerなんて絶対に言いませんし、分別のある黒人はこの言葉はまず使いません。
ラップのリリックや黒人の日常語でバンバン出てくるので気軽に使っていいのかなと勘違いする人もいるかもしれませんが、公の場で使うと間違いなく場が凍り付くし、その後危険な目に遭う可能性があるので絶対やめておきましょう。
余談ですが、昔モブノリオという芥川賞作家が「介護入門」という作品で「胞輩」と書いて「ニガー」とルビを振っていました。
個人的に、文学は自由なので蔑称だから使ったらダメだとは思いませんが、どこまでの認識でどこまでの覚悟でそうしたのか改めて気になるところです。
今は直されているのかもしれませんが……。