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<逸脱>した若きジャズミュージシャンへ、39歳の元ジャズミュージシャンより


八幡謙介ギター教室in横浜

日野皓正児童虐待(ビンタ)事件について何度も書いてきましたが、この事件…というよりは渦中の中学生ドラマーに対する僕の気持ちは一切公にしてこなかったので、(たぶん)最後にそれを述べておきます。

以下は単なる僕の気持ちであり、事件に対する客観的な考察でも意見でもありません。

<逸脱>した若きミュージシャンへ

ドリバンのライブお疲れ様でした。

僕は今年39歳になる元ジャズギタリストです。

ビバップを中心に演奏活動をしてき、あるときからフリージャズに転向したものの、いろいろあってジャズミュージシャンであることはやめました。

ここ数年はジャズを聴くこともほとんどなくなり、細々と教えたり、時々ブログに記事を書いたりしています。

そんなある日、ビンタ事件を知り、独自にリサーチしたり考えたりし、それらを記事にもしてきました(もしかしたら目にしているのかもしれません)。

君が尊敬している(と報道されている)人に対して批判していることについて気を悪くしていたら謝ります。

 

僕は基本的に社会問題には首を突っ込まないようにしています。

めんどくさいですからねw

でも今回だけは違いました。

僕をそうさせた一番の要因は、社会正義でも暴力への嫌悪でも音楽教育への危惧でも体罰への問題提起でもなく、君をかっこいいと思ったからです。

僕は、ジャズは<逸脱>する音楽だと思っています。

ルールをあえて破ること、逆らうこと、反抗すること、そしてその上で音楽としてギリギリ成立させることがジャズだと僕は信じています。

そして、僕自身も可能な限りそうしてきました。

と同時に、やればやるほど僕はジャズにうんざりしてきました。

というのは、日本のジャズシーンでは<逸脱>することを戒める風潮があるからです。

サウンドは流麗に、タイムは正確に、アドリブは上手に……

それに加えて、日本社会独特の礼儀や譲り合い、思いやりの精神、年功序列、徒弟制度などが無理矢理適用され、本当につまらない音楽になっていると思います。

僕はある時期から、日本のジャズに1ミリも期待しなくなりました(その気持ちを吐露したのが「ジャズに人が集まらない理由」という本です)。

そんな中で、君のことを知りました。

 

君の演奏は切り取られた動画でちょっとだけしか観ておらず、後はその場にいた人のツイートなどで想像しただけなのですが、トレーディング(8バースか16バース?)の流れをあえて断ち切り、自分のドラムソロとして喰ったこと、他のプレイヤーを巻き込んで何かをはじめようとしたこと、その結果スティックを取り上げられたにもかかわらずまだドラムを叩こうとしていたこと、暴力に反抗したこと…

その行為全てを僕は純粋に「かっこいい!」と思いました。

と同時に、日本にもこんなジャズミュージシャンがいたんだと、救われたような気持ちになりました。

君の<逸脱>は、僕には最高にJAZZに思えました。

僕も自分で言うくらいなので、音楽活動の中で<逸脱>をしてきました。

ごく普通のジャズクラブでフリージャズをやって店長に怒られ事実上出禁になったこともあります。

自分の名刺代わりになる大事な演奏やDVDの収録で、あえて実験的なことをしたりもしました。

しかし僕のそれは、方法論としての<逸脱>であり、それをすることがジャズだとわかっているからできたことです。

もっとわかりやすく言うと、僕は知識で<逸脱>しただけで、心までは<逸脱>していなかったのです。

しかし、少なくとも僕の目には、君が心から<逸脱>したように見えました。

だから僕には君がキラキラと輝いて見えたし、はっきり言って嫉妬すら覚えます。

なぜなら、39歳になる僕はもう二度と心から<逸脱>できそうにないからです。

 

すでに感じているかもしれませんが、残念ながら日本のジャズシーンおよび日本社会は、君の<逸脱>を容認しません。

おそらく今後、あらゆる機会にあらゆる大人が君の尖った部分を有無を言わさず削っていくでしょう。

それを少しでも感じたとき、どうか抵抗し、反抗してください。

誰であれ、君が心から望んでいることにストップをかけてくる大人を疑ってください。

そうすることであらゆる困難が君に降りかかるでしょう(それはもう知っていると思います)。

もしかしたら、誰も相手にしてくれなくなるかもしれません。

もしそうなったときは僕を訪ねてきてください。

何もできないかもしれませんが、話ぐらいは聞くことはできます。

 

それでは。

 

39歳の元ジャズミュージシャンより