八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

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日野皓正児童暴行事件について 音楽的質問への回答


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僕は基本的にツイッター上では議論しないようにしているのですが(収集つかなくなるため)、本日meemee_hitsuji3さんから核心を突いていると思われるリプが来、スルーするのももったいない気がしたのでご本人の許可を取った上で引用、返信し皆さんと共有したいと思います。

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確かに、身の程知らずといえばそうなのですが、勇気を持って逸脱したという点は素晴らしいと思います。

僕は以前はよくリーダーとしてジャズライブをしておりましたが、きっちり立場をわきまえた仕事をする共演者にいつもイラついていました。

まあそれが大人なんですが、自分の音楽感を海外で確立したので、日本での仕事はどうしても肌に合わなく、最終的にやめました。

だからこの少年の<逸脱>には心から感動したんですよね。

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「有料のコンサートなら演者はたとえ子供でも客を楽しませるべき」

確かにそうです。

ここでまた新しいジャズ的なトピックが見えてきました。

ジャズのリスナーが楽しむ”べき”ものは何でしょうか?

それこそが<逸脱>です。

「今日のプレイヤーはどんなすごい<逸脱>を見せてくれるのだろう?」

「このメンバーでどんな<逸脱>した曲をやるのだろう?」

「あそこのクラブよりこっちのクラブのほうがもっと<逸脱>してるらしいぞ」

ジャズファンはそうやってワクワクしながらお店に足を運ぶものでした。

しかし現代の、それも日本の中学生が教育の一環として行うジャズコンサートの観客は、ジャズにそれを求めていなかった(あるいはジャズをもっと行儀のいいものと思っていた)。

だから<逸脱>した少年(ドラマー)を批判した。

しかし、本来のジャズのギブアンドテイクの関係性からすれば、少年の<逸脱>は、正しく観客を楽しませようとした行為だと僕には思えます(もちろん、明確にその意図はなかったとしても)。

少年「ルール破ってやんぜ!」

ジャズファン「うおー、やりやがった!(でも<回復>できなかった…、うん、次回がんばれ)」

本来それだけの話だし、ジャズファンならそのカオスを楽しめるはずです。

それが楽しめなかったらジャズはむいていないというだけの話です。

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「信頼が足りない」……確かにそうですね。

でもそれは少年だけの問題でしょうか?

共演者の中学生の少年への信頼はどうでしょう?

ジャズのセッションでは暴走ともとれるような<逸脱>を、残りのメンバーが一致団結して<回復>させるという場面がいくらでもあります。

たとえ<逸脱>したやつが気にくわなくても、放置するということはありえません。

観客がいるステージならなおさらです。

<逸脱>した少年が演者失格ならそのステージにいて何もできなかった他の子供も同様なのでは?と僕は思います。

一説によると少年は他の子をあおって何かしようとしていたとか。

もしかしたら少年の頭には<回復>点が見えていたのかもしれません。

結局それは暴力でつぶされてしまいましたが。

ジャズにおける信頼とは、「お前が無茶してロストしても絶対に助けてやる、だから好きなだけ<逸脱>しろ!」という相互の連帯だと僕は思います。

「お前が<逸脱>したら場が崩れる、他の子が迷惑する、だから<逸脱>するな」では

 全てが縮こまってしまい、つまらなくなります。

結局それが現代日本のジャズの考え方となってしまっているのですが。

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個人的な趣味でいうと、トップが率先してドラムの<逸脱>に乗っかり、他の子供も巻き込んでカオスに突入、あたふたする主催者、首をひねる観客、時間を押して押して最後は無理矢理緞帳を下ろす、それでも鳴り止まない音……となったら一番おもしろかったのにと考えます。

そして教育委員会から出禁を食らって「やっちゃったよ~」とヘラヘラ笑ってたら僕は日野皓正を心から尊敬したでしょう。

 

他の子が入れない~不憫について。

これも「順番を待ってる子のことも考えて~」と同様、日本的常識とジャズの常識が相容れなかった不幸な出来事だと思います。

僕からすれば「なんで強引に入ろうとしないの?」「なんで<回復>への手助けをしてあげないの?」と感じます。

もちろん、そうしようとはしたんでしょうが、結果<回復>できなかった。

それは全員の責任だと僕は思いますよ。

ジャズは良くも悪くも、隅っこでじっと待っている子に優しく声をかけてあげる音楽ではないのです。

そこもやはり日本の常識や文化と相容れないところでしょう。

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当人同士解決しているならそれで終わりだとは思いません。

なぜなら、日野は本件において本人の意思にかかわらず音楽講師という立場を代弁するポジションに立っているからです。

日野が「俺は生徒を殴る」と言えば世間は「音楽講師は生徒を殴る」「ジャズの現場では現場監督がプレイヤーに暴力を振るうのが当たり前」と捉えます。

教室を経営しているもの、子供向けのジャズイベントを開催するジャズミュージシャンからすれば完全なるとばっちりです。

だからこの問題はしっかりと報道されてほしいと僕は願っています。

 

最後に、ついでなので僕が一番好きな<逸脱>したライブ演奏をご紹介します。

マイルス・デイビスの下記アルバムに入っている「There is No Greater Love」という曲です。

YOUTUBEで検索すれば出てきます。

わけわからんテーマ、急に演奏をやめるドラムとピアノ、そこからのみごとな<回復>、ソロをコーラス中盤で終えるマイルス(本来そこで終わったらダメです)、あまりにも普通すぎるソロを吹くジョージ・コールマン(サックス)をいたずらっ子のように煽りまくるハービー(ピアノ)とトニー(ドラム)。

めっちゃ面白いですよ。

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