何かを教わったりアドヴァイスをもらったとき、それを実行する前にいきなり「まとめの発言」をする人がけっこういます。
例えば、何かのやり方を教えると、それをする前に『なるほど、それは○○ということですね』と一度頭の中でまとめてから取りかかるといったように。
一見こうした人はできる人のように思えますが、逆です。
会社などでも、こういった人は意外と仕事が遅かったり、ミスが多いのではないでしょうか?
では、なぜこのまとめ癖がダメなのでしょう?
まず、なにかをまとめるということは、膨大なサンプルが存在することが前提となります。
トライアンドエラーの実例や、そこから見えてくる自分が理解できていること、理解できていないこと、工夫したこと、イメージしたこと、などなど無数のサンプルがあってはじめて<まとめる>という作業が意味を帯びてきます。
それらがなかったらどうでしょうか?
なにもせずただ頭の中で考えて、勝手に結論を出しただけです。
いわゆる机上の空論というやつです。
僕にはこのまとめ癖が不思議で仕方ありません。
相手にとって今はじめて聞いたこと、はじめて教わった概念なのに、なぜトライもせずに即座に『こういうことですよね』とまとめるような発言ができるのでしょうか?
また、『それって○○みたいなものですね』と何かにたとえるのも同様です(そのことに熟知していなければたとえ話など作れません)。
ちょっとした言葉のあや、思考の癖だ、おおげさに言うなと思われるかもしれませんが、長年レッスンをやっていると違いは明白です。
上達する人、理解が早い人はいきなりまとめるような事はまず言いません。
言葉より先にトライしています。
その分変な先入観が含まれないので、こちらが伝えたことをかなり高い純度で受け入れることができているのでしょう。
何かを学び、成長するということは、今の自分を乗り越えるということです。
そのためには、今の自分では(高度なため)わからないことをそのまま一度受け入れて、一旦苦しみ、その中から何かを発見して最後にまとめる、というプロセスが必要です。
その行程をすっ飛ばして、いきなり今の自分の能力や思考でまとめてしまうと、せっかく教わった高度な何かをいきなり今の自分レベルに引きずり下ろしてから始めることになります。
そうやって始めたことは、”今”の自分の能力や思考でまとめることができるレベルの内容になってしまっているので(本来はそうではないけど自分でそう作り変えてしまっている)、当然成長などありえません。
何かをするにあたってまず頭でまとめてしまう癖のある人は、一度考えてみてはいかがでしょうか?
とはいえ、こういった思考法は、自分を変えないためのバリア(新しいものを受け入れてショックを受けないための防御策)のようなものだと思われるので、変えていくのは苦労しそうですが。