以前、こちらの記事で、脳の「デフォルト・モード・ネットワーク」(DMN)という機能についてご説明しました。
簡単におさらいすると、
・脳は何もしていないときに過去の記憶を整理している。
・この時間を作らないと練習内容を消化できず、上達しない。
・だからオフを作ろう。
ということです。
今回はこのオフについて、もう少し深く考えてみたいと思います。
日本ではどうしても、「休む」=「怠ける」といったイメージが定着してしまっているので、オフというと何か悪いことをしているような、あるいはサボっているような気がしてしまいます。
また、毎日休まず練習する人が偉い、そういった人が報われるべき、評価されるべきだという観念もあります。
このような考え方が、オフを取り辛い空気を作っていると考えられます。
しかし、先日の記事でご説明した通り、オフはなまけや怠慢ではなく、練習内容を整理するために絶対必要な行為です。
戦略的に上達するためには、オフに対する考え方を改め、積極的にこれを実践していくことが必要です。
DMNは、何もしないときに自動的に発動される脳のネットワークです。
ということは、DMNを最も効果的に活用し、脳に練習内容を整理させるためには、極力何もしないことが大事だということです。
実はこれも実験したことがあります。
ある1日をオフだと決め、朝から夕方ぐらいまで、家事以外一切なにもせず(音楽も動画もなし)、ただ家で寝転がっていました。
すると夕方ぐらいから恐ろしいほど頭が冴えてくるのがわかりました。
DMNがフル稼働した結果でしょう。
オフの日に、「今日はオフだから本を読もう、溜まっていた動画を観よう…」とあれこれやると、結局そのために脳が活動してしまいます。
そのとき、DMNの働きは縮小されています(DMNの活性化はそもそも何もしないこと――脳をデフォルトの状態に置くこと――が前提なので)。
ですから、例えばギターを練習していて本気で上達したかったらオフの日は本当に何もせず、徹底的にぼーっと過ごすことをお薦めします。
とはいえ、日本人はどうしてもせかせかする性分があり、オフとなると「このオフを充実させねば!」と何かしたくなってしまうんですよねw
僕も上記の実験以外、普通にオフを取るときはやはり溜まっていたファイルの整理をしたり、別の仕事をしたり何かと動いてしまっています。
その点、西洋人はただただ何もしないというオフの過ごし方が上手いんじゃないかなと思います。
日常的な練習のためのオフなら、ギターや音楽から離れるだけでOKだと思います。
しかし、何か大事な本番のための練習(ライブ、コンクール、レコーディングなど)をしているなら、本当になにもしないオフを取るべきでしょう。
そうすることで、練習内容をきっちりと脳に整理させることができます。
そして仕上げとして、本番3日前にめいっぱい練習し、2日前にオフ(絶対に何もしない)、1日前に軽い確認程度の練習とすると、心身共にすっきりした状態で本番を迎えられるのではないかと思います。
本番直前まで1日も休まず猛特訓……なんてやってると、脳は未整理の情報でパンパン、体は疲労困憊、ボロボロの状態で当日を迎えてしまいます。
それで結果が出る人もいるでしょうが、戦略としてはお薦めできません。
もちろん、練習練習また練習で大記録を樹立した人も中にはいます(「3倍稽古」で有名な柔道の木村正彦など)。
しかし、そういった人は何万人に一人の特別な存在なので、安易に真似をするのはやめ、ロジカルに戦略的に練習し、オフを取ることをお薦めします。