スイングは深いものや大きいもの、前回比較したちょっとシャッフルっぽいものや流麗なものなどいろいろあります。
その中には、抑制されたスイングというのもあります。
これはちょっと注意しないと聞き逃してしまい、イーブン(全く跳ねない)と勘違いしてしまうケースもあります。
そういった抑制されたスイングで演奏されている有名な楽曲を聴いてみましょう。
ギタリスト的に最も有名なのは、ケニー・バレルの「Midnight Blue」というアルバムに入っているこちらの曲です。
アルバムはこちら。

- アーティスト: Kenny Burrell,Ray Barretto
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 1999/02/04
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ぱっと聴くとイーブンに感じてしまいがちですが、よく聴くと実はゆるーくスイングしています。
特にテーマのメロディを聴くとうっすら跳ねているのがわかると思います。
ギタリストで音源と一緒に弾いてみて「なんか違うな~」と感じた人もいるかもしれませんが、その感覚は正しいです。
ざっくり言うと、この演奏では5割ぐらいスイングしています。
なぜそうしているかというと、それぐらいのグルーヴ感が楽曲にちょうどよかったからでしょう。
完全にイーブンでやるとなんだかペラペラした感じになるし、ちゃんとスイングするとこの曲の怪しさとか色気みたいなものが消えてちょっと間抜けになってしまいます。
ちょっと怪しく、渋く、重たい感じを出すにはスイングを5割ほどに抑制する必要があったのでしょう。
楽曲に合わせてスイング感を抑制するというのはかなりのセンスと高等技術を要します。
シンプルな曲なのに、いくら弾いても原曲には足下にも及ばないというのはそういった点がおろそかになっているからでしょう。
ちなみにこの曲はかのスティーヴィー・レイ・ヴォーンもカヴァーしていますが、抑制されたスイングではなくイーブンで演奏しています。
そして、はっきりいってダサいですw
申し訳ないけど、この曲のいい部分が完全に抜けてしまっています。
よかったら原曲と比較してみてください。
こちらのアルバムに収録。
もうひとつ、セッションでは定番、ハービー・ハンコックの「Cantalope Island」という楽曲を聴いてみてください。

- アーティスト: Herbie Hancock
- 出版社/メーカー: Blue Note Records
- 発売日: 1994/06/14
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こちらも抑制されたスイングですが、「Chitlins Con Carne」に比べるともう少し、7割から8割ぐらいはスイングしています。
だからイーブンのつもりで原曲に合わせるとかなり違和感を覚えるはずです。
もちろん、その違和感は正しいのですが、何が違うのか分からないと混乱するでしょう。
ちなみにこの曲は日本ではイーブンの曲として認知されており、セッションでもそうやって演奏されます。
もちろん、それについては全く問題はありませんし、プロでもこの曲をイーブンで演奏していることがほとんどです。
それが現代的な解釈ということなのでしょう。
ただ、原曲はイーブンではないというのも事実です。
そこはきちんと理解しておくべきです。
そして、原曲のあの雰囲気が出したいのであれば抑制されたスイングを訓練する必要があります。
といっても、「スイングを7割ぐらいに抑制して演奏して」と告げ、「はいよ」とすぐできるミュージシャンがどれだけいるのかは疑問ですが。