DTMが普及し、現在では楽器のプレイヤーでもミックスをして当たり前の時代になっています。
今やミックスぐらいできないとミュージシャンじゃないという認識が普通なのかもしれません。
ただ僕はずっと前から、プレイヤーはミックスできなくてもいいし、DTMも極論できなくていいと言っていて、今もそれは変わりません。
僕も一応DTMはかじったことがあるんですが、機材地獄にお金がついていかず、また、ミックスはミックスで職人技であり、ギターと同じでそれなりに使えるようになるまで相当修行が必要であることは分かっていたので、だったら断念してギターに専念し、ミックスが必要ならその時は外注すればいいかと考え、完全放棄しました。
そこから10年ぐらい経ちますが、今のところ後悔もしていないし、特に困ったこともありません。
そんな中、最近またモニターヘッドホンでいろんな音源のミックスバランスを聞くことにはまっていて、ふとあるバンドのアルバムを聴いてみました。
詳しくは言いませんが、ベースの人がエンジニアをしているそうです。
最初聴いたときに「なんかモコモコして抜けねーな」「なんでこんなに低音に寄ってるんだろう」と不思議に思っていたんですが、改めて聴くとベースだけが変に前に出て珍しくクリア、一方でロックバンドなのにギターがちょっとこもってるし、全体的にハイが足りないと感じました。
これ、ベース耳で作ったサウンドなんでしょうね。
ベーシストがいつも注意して聴いている帯域がプッシュされたサウンドになっている感じがします。
ミックスはよく、プレイヤーがやると自分の楽器ばかりでかくするとジョークのように言われますが、正にそれの気がします。
まあプロの音源なので「俺の音を一番よくしてやろう」という下心はさすがにないとは思いますが、ベーシストがやると知らず知らずとローに寄りすぎてしまうというのはありそうな話です。
もちろん、ギターもピアノもドラムも同じ。
恐いのは、自分の耳が自分の楽器のおいしい帯域を聴くためにチューニングされていると本人が自覚していないことです。
だからプレイヤーがミックスをすると危険だということが改めて分かりました。
そもそもプレイヤーがミックスをするようになったのは、ビートルズが最初だと言われています。
それまではプレイヤーとエンジニアは完全分業でした。
エンジニアはミュージシャンではなく技師でしたからね。
2000年代にDTMが爆発的に普及し、プレイヤーがミックスも、場合によってはマスタリングもするようになりました。
ただ僕の肌感として、昨今「やっぱプレイヤーはプレイして、ミックスはエンジニアに任せた方がいい音になるよね」という認識に戻ってきたような気がします。
これは僕の認識違いかもしれませんが。
10年代ぐらいから大量発生した兼業エンジニアのひどい音にうんざりしている人が増えたような気がしています。
改めて、ひとつの楽器をとことん突き詰めるプレイヤーはやはりミックスをしないほうがいいと僕は思います。
また、エンジニアになりたかったらあえて楽器をやらないか、いろんな楽器を満遍なくいじるようにした方がいいでしょう。
ミックスぐらい余裕とか思っているプレイヤーは、ミックスという職人技術を舐めてるところがあるように思えます。
昔からプレイヤーはエンジニアを下に見る悪習がありますからねえ…