2009年9月に「ギタリスト身体論」を刊行し、早15年が経ちました。
子供ならもう高校生ですか……
15年経つとさすがにもう売れ行きは落ちていますが、それでも新しい読者はまだ獲得しているようで、我ながら驚きます。
はじめての執筆ながら、どうせなら歴史に残るものを、時代が変わっても通用する本質をという気持ちで書いていましたが、本当にそうなるとは思ってもいませんでした。
そして、刊行当時驚きを持って迎えられた僕の脱力・身体操作研究は、今となっては当たり前になっています。
僕が身体論を書いていたとき、ギターの世界にはまだ身体操作という概念はありませんでした。
脱力も「力を抜いて」ぐらいの簡単な説明しかなく、それらをきちんと研究し、発表したギタリストはいませんでした。
しかし今では、YOUTUBEで検索すればそういった動画がいくらでも出てきます。
講師さんも独自のフォーム理論を持っていて当たり前、奏法研究を武器に活動している人もいるようですね。
僕がはじめたときは「なんだこいつ?」と変な目で見られてばかりでしたが、今やフォームの研究をしていると言っても「あ、そっち系か」と受け入れられる土壌ができているようです。
自分が死ぬ想いで切り開いてきた道が、このように後進の役に立っており、なにがしかの「流れ」を構築できているということに、なんとも誇らしい気持ちになれます。
まあ時々、どう考えても僕が書いたことをちょっとアレンジしてさも自説のように発表しているのを見かけますが、それもひとつの現象として受け入れています。
「自分の思想が誰が作ったか分からないぐらいに広まってはじめて世に浸透したと言える」と言う人もいるので。
まあでも本気でギターの奏法を研究発表したいならちゃんと出典は出すべきです。
これは僕に対してではなく、自分のためです。
出典出さない人は研究者にはなれません。
と、15年を振り返ってみて改めて、自分が日本のエレキギター史になにがしかの痕跡を残せたことが確認でき、なんかほっとした気持ちになれました。
あとは「ギタリスト身体論3」のあとがきにも書いた通り、歴史にゆだねるだけです。
本気でギタリストを目指し始めた17歳の頃から、ギターを弾き、音楽をやって心が安まったことはたぶん一度もありませんが、46歳になってようやくそこに到達できた気がします。
僕のギタリスト、ミュージシャンとしての自己形成は終わりました。
今後はそれを用いて、ゆっくり楽しくギターや音楽と向き合いたいと思います。