YOUTUBEで、オタクがいじめられていたら人はどうするのか、子供が虐待的な扱いをされていたらどうするのか、人種差別を目の当たりにしたら人はどう反応するのか……といった社会実験動画があります。
いくつか観たことがありますが、全部アメリカで撮影されたものです。
そしてだいたいは、正しいことをする人が出てきてその勇気ある行動に感動する、みたいな構成になっているようです。
僕はこれ系の動画にずっと懐疑的でした。
というのは、実際に僕が見た光景とはあまりにもかけ離れているからです。
ひとつは既に記事にしたのでこちらをご覧下さい。
もうひとつ思い出したことがあるので以下書いておきます。
やや前提が長くなるのでまとめておくと、
・ボストンで子供の虐待を見た
・そこにいた全員なにもしなかった
という話です。
そんなにきつい話でもないので身構えなくて大丈夫です。
ボストンで最後に住んでいたのがロックスベリー地区のジャマイカ・プレインというところで、元々は有名なスラムでした。
僕が住んでいた頃はまあまあ治安も改善されていて、危ない目にも遭ったことはありません。
とはいえ、マサチューセッツ出身でまともな家庭で育った人は基本近づかない場所でもあります。
引っ越しが完了した際、アメリカ人のルームメイトに「駅の方には行ってもいいけど、反対側の国道のあたりは行かない方がいい」と教えられました。
もちろんその教えは守っていましたが、ひとつだけ例外がありました。
それは、ランドリーがその国道を渡った先にしかないということです(アメリカでは基本家に洗濯機がない)。
ですので、最低でも週1回はそちら方面へと足を運ぶことになります。
国道へ出ると、なんとも殺伐とした風景が広がっており、スタンドには厚さ何ミリあるんだよという防弾ガラスが貼ってあったのを覚えています。
とはいえ、そちら地域でもやはり危ない目に遭ったことは一度もありませんでした。
さて、いつものようにランドリーで洗濯をしながら本か何かを読んでいたら、女性の怒鳴り声が聞こえてきました。
ふと見ると5歳ぐらいの男の子にものすごい形相で怒鳴っている黒人女性がいます。
子供はゲームか何かをねだっているようです。
その母親の剣幕がものすごくて、僕はすぐに目をそらせて『うわー、うわー…』と一人でパニックに陥っていました。
そこから自分の洗濯が終わるまで、母親は大人でもびびってしまうぐらいの態度で5歳程度の子供をどなりつけ、汚い言葉で罵っていました。
その様子はどう考えても今だけではなく、日常的にそういう態度で子供に接していることが容易に想像できます。
そう、虐待です。
さて、その場にはその地域に住んでいるであろう人が沢山いましたが、本当に誰一人として母親に声をかけることもなく、皆が完全に無視していました。
関わり合いたくないという空気がランドリーに充満していました。
僕もその一人だったんですが。
結局僕は自分の用事が済むと逃げるようにそこを出ました。
それ以来その親子は一度も見ていません。
そういえばこのとき『アメリカ人ってこういうの助けるんちゃうん?』と内心思っていた記憶があります。
実際は、本当に誰一人として声もかけず、完全無視していました。
さて、話を戻しましょう。
YOUTUBEの社会実験動画では必ず(といっても5本も観ていませんが)正義を為す人が現れます。
それも通りすがりの人、たまたまそこにいた客や店員などです。
じゃあこれはフェイクなのか?
仕込みなのか?
おそらくリアルはリアルなのでしょう。
ただし、何十回とやって成功した一回なんだと思います。
極端な話、百回やれば一回ぐらいは正義の人が現れるでしょう。
そして、それだけを放送すれば「アメリカ人は見て見ぬふりをしない」という動画のできあがりです。
とはいえ、僕の体験もそれはそれで何十回に一回たまたま遭遇した「見て見ぬふりをするアメリカ人」ではありますが。