久々に映画でも観ようと思い、昔から好きだった「パリの確率」を再視聴しました。
1999年公開
監督:セドリック・クラピッシュ
出演:
「猫が行方不明」のセドリック・クラピッシュ監督作品。
あんまり有名ではないのでほとんどの人が知らないと思います。
アマプラにもありませんし、ブルーレイ化もされてないみたいですね。
フランスでは大ヒットしたらしいですが。
ご年配の方はジャン=ポール・ベルモンドという名前に反応するでしょう。
- ジャン=ポール・ベルモンド
主役のロマン・デュリスも有名ですが、結局日本ではハネなかったみたいですね。
- ロマン・デュリス
時は1999年大晦日、パリのとあるマンションで21世紀を迎えるパーティが開かれる。
主人公の恋人リュシーは彼氏のアルチュールとこの記念すべき夜に子作りをしようと画策していた。
トイレで二人っきりになり事をはじめたが、最後の最後でアルチュールに拒否され落ち込む。
アルチュールは経済状況や将来への不安からまだ子供を持つべきではないと考えていた。
その悲観的な態度にうんざりして出ていくリュシー。
呆然とするアルチュールの頭になぜか砂が落ちてくる。
不振に思い、天板を開けて上に登ってみると、なんとそこは70年後のパリだった。
砂に埋もれたパリの街で未来の子供や孫たちと出会い、話していくうちにアルチュールの気持ちに徐々に変化が生まれていく……
本作は3つの世界観が楽しめます。
1、冒頭
一昔前のコントのような宇宙船で地球を攻撃しようとする宇宙人。
作中作です。
何回観てもなんでこれを入れたのか不明。
2、現代のパリ
現代といっても1999年ですが。
パリジャンの生活(どっちかというと庶民のやや下の階層)や、パーティの要素が描かれています。
「猫が行方不明」もそうですが、この監督は一般庶民の描き方が上手いです。
3、未来のパリ
70年後のパリは砂に埋もれた世界となっています。
監督が安部公房の「砂の女」から着想を得たという考察もありますが、
パンフレットには書いてなかったです。
どっちかというとヨーロッパ人が密かに持つアフリカへの憧憬を映像化したもののような気がします。
フランス人のイメージする近未来のディストピアがどこか長閑で、ちょっと漫画的で面白いです。
ガジェットも”いかにも”な感じではなく、手作り感が楽しいです。
本作の原題は「Peut Etre」、直訳すると「たぶん」となります。
これがそのまま主題というかキーワード的に登場します。
前半では主人公のアルチュールは「たぶん」自分に子育ては無理だと判断し、彼女の希望を拒否します。
一方彼女のリュシーは同じような境遇ですが「たぶん」大丈夫だと思っている。
物語が進むにつれてアルチュールはだんだんと考えを変えていき、最後には彼女の希望を叶えます。
「たぶん」やっていけるだろうと考えられるようになったのでしょう。
この辺の感情の変化が微細でちょっと捉えにくいのがフランス映画のめんどくさいところです(僕は好きなんですが)。
そして、事後二人でベランダからパリの街並みを観ているとき、「男の子なら”アコ”にする」と言うアルチュールに対し、リュシーは「たぶんね…」と答えます。
リュシーからすると子供ができるかどうかまだ分からないし、それが男の子かどうかも分かりません(アルチュールは未来で見てきているから知ってるけど)。
将来はどうなるか分からないけど、「たぶん」の中にちょっとだけ希望があれば生きていける……そんな感じのメッセージが読み取れます。
この辺のはっきりしないところがフランス映画のめんどくさいところであり、面白いところでもあります。
いろいろありますが、僕が好きなところはパーティが終わってアルチュールとリュシーが部屋に帰り、裸になって寝ようとしたとき、アルチュールがリュシーの腰のラインを見つめ、それがだんだん未来の砂漠の姿になり、そこで未来の子供(アコ)が消えて亡くなるシーンです。
女体、エロス、砂漠、アフリカ的な何か、死、消滅……これぞフランス文学といったメタファーてんこ盛りでゾクっとしました。
ハリウッド映画にはあんまりこういう表現はないですね。
この「パリの確率」はあまりサブスクにないのでたぶんDVDを購入しないと観られません。
調べた限りではAMAZON PRIME、U-NEXT、Huluにはありませんでした。
近い作品なら「猫が行方不明」ならアマプラで観られます。
興味ある人はまずそこから入るのをおすすめします。