ギター教室開校当初(関西にいたとき)からずっと迷っていたことがあります。
それは、子供に教えるべきかどうか。
この度完全に答えが出ました。
金輪際子供にギターは教えません。
なぜかというと、モンスターペアレンツ(以下モンペ)が多すぎるからです。
今まで親から子供のレッスンを依頼されたことが何度もあるんですが、体感的に7~8割ぐらいはモンペでした。
ちゃんと統計取ってないので体感でしかありませんが、決して大げさな数字ではありません。
そうしたモンペたちへの対応で精神を削られてきたことをかんがみ、今後モンペに業務や自分の人生を煩わされないため、保護者対応が必要な未成年のレッスンを今後永久に行わないことに決めました。
今回はその総括として、僕が実際に出会い、処理してきたモンペの実体を公開しておきます。
現在進行形でモンペに悩まされている講師の方、これから子供向けのサービスをはじめようとしている方の参考になれば幸いです。
最後に僕なりに整理したモンペの習性と、モンペ撃退法も書いておきます。
まずは軽いところから。
ある子供のレッスン開始時間直前に、親から「今日うちの子30分遅れます。到着時間から一時間レッスンしてもらえますか?」とメールが来ました。
一読して『なんちゅう図々しい親だ…』と呆れ、「そういったことは出来ません」と返信しました。
その後すぐにその子は辞めました。
ある親から、子供を音楽専門学校に入れたいと相談がありました。
僕は「専門学校ってたいしたこと教えてないし、別にそこ出たからって仕事がもらえるわけではないですよ」と親切心で教えたんですが、「いや、○○学校では仕事の斡旋もしてもらえるんで」と食い下がってきました。
じゃあ相談なんかせずにそこ行ったらいいのに…
そもそも、専門出たての子なんてミュージシャンからしたら地雷臭しかしないし、紹介されても義理で一回使って「またよろしく!」で終わりが関の山なんですがね……。
ていうかこの親、なんで僕に質問しに来たんでしょう?
専門行くことを肯定してほしかったんでしょうか??
いまだに謎です。
その親の子供が習いに来たかどうかは忘れました。
あるときレッスン依頼が来て、「子供が引きこもりで学校に行っていません。ギターや音楽は好きなので、外に出るきっかけとして先生の教室に通わせてもらってもいいでしょうか?」といった内容でした。
一応OKし、この場合は親は来ずに子供(たしか中学生ぐらい)が自ら教室に来ました。
正直『なんで子供の大事な問題を面識もないたかだかギター講師に預けるんだろう?』と不思議でしたが、レッスンは受け入れて何度か通ってくれていた記憶があります。
ただ、どう考えてもギターや音楽が好きだとは思えなかったのでそのことを親にメールすると、なんとも歯切れの悪い返信が返ってきました。
内容ははっきりと覚えていませんが、思春期の子供の扱いをめんどくさがってこちらに丸投げしているのが伝わってきました。
それを読んで、「自分の子供なのになー……」となんとも言えない気持ちになりました。
子供はすぐ来なくなりました。
こういったネグレクト系のモンペは何人か記憶にあります。
ここら辺から「さすがに創作でしょ?」と言われるような内容になりますが、本当のことです。
ある子供のレッスン日に親からメールが来て「今日うちの子学校で***(詳細忘れた)なので教室に行けるかどうかわかりませんが、一応空けておいてください。来たらレッスンしてください。行かなかったらキャンセルで」と言われました。
僕は目を疑い、すぐさま「来るかどうか分からない生徒を待つことはできません。今日はキャンセルで処理します」と返信しました。
するとまた返信が来て、「行けたら行くので空けておいてほしい」と言われました。
こちらは対応を既に伝えてあるのでそのまま返信せず、来ても断って帰ってもらうつもりをしていましたが、確かその子はその日来なかったと記憶しています。
その日以降連絡も来なくなり、レッスンは自然消滅しました。
さて、ここから先は全て同じ一人の保護者が行った内容です。
これまでとは格が違うので、僕はその親を”スーパーモンペ”と呼んでいます(以下スパモン)。
誓って言いますが、全て事実です。
スパモン親子が教室に来てから二ヶ月ほどは、何の問題もなくレッスンが進んでいきました。
子供もちゃんとしていて、大人と同じ内容も消化できていたので、内心は結構期待していました。
そんなある日、スパモンは教室に来るなりこう告げてきました。
「先生、あの、教室で教わっていたことを練習していたら子供が突然ギター弾けなくなっちゃったんです!だからレッスン内容を変えてください!」
その子にはフォームを教えており、まあフォームを変更する過程で一度弾けなくなることはあるにはありますが、そうならないよう細心の注意を払っていました。
それに、前回からレッスン期間は一週間しか空いていないので、たった一週間でそこまで急激に変化するとはとうてい思えません。
子供が目の前にいるので「弾けなくなっちゃったの?」と訊くと、「いえ、大丈夫です」と不思議そうな顔で答えます。
ん?と思い親を見ると今度は「いや、なんか、難しくて理解できないって…」と言うのでまた子供に「難しかった?」と訊くとまた不思議そうな顔で「いえ、大丈夫です」と。
再度親を見ると見るも無惨なほど焦って「いや、あの、実は親が理解できなくて……だから内容を変えてもらえませんか?」と白状しました。
要するに、子供はちゃんと内容を理解して練習しているけど親が何やってるのか分からないから子供が弾けなくなったという体にして嘘をつき、無理矢理レッスン内容を変えさせようとしてきたのです。
ちなみにこのスパモンは両親ともに音楽経験ゼロです。
僕は内心『なんで嘘つくんだよ、しかも子供の目の前で…』とイラっとしたんですが、そこは気をおちつけ「今やっていることは絶対に必要なことですし、弾けなくなることのないように注意してやっているので大丈夫です。あと、高度な内容なので楽器経験がなければ理解できなくて当たり前ですよ」と説明しました。
するとスパモンはなんと「内容を変えてもらえないのなら退会も検討させてもらいます」と、退会をちらつかせながら脅してきました。
まさかの発言に僕は動揺してしまい、まあそこまで言うんなら別のことをやってもいいか、どっちみち絶対やる内容があるし、子供も待っているから親と長々と話していてもらちがあかない、順番が入れ替わっただけだと思えば……と、スパモンの強引な内容変更を受け入れてしまいました。
スパモン親子が帰ってから、『あれって脅迫だよな……、あと、普通に嘘ついたし』と思いだし悶々とした日々を過ごしたのは言うまでもありません。
しかしまあこれで納得してくれたみたいだからいいかと忘れることにしました。
このとき教室では仮入会三ヶ月→双方合意で本入会というシステムを採用していました(現在廃止)。
スパモンに嘘と脅迫で内容変更をさせられた時点で仮入会期間は残り一ヶ月、ここで教室としてはどうしてもはっきりさせておかなくてはならないことがあります。
それは継続するかどうかです。
本来ならとりあえずレッスン内容を三ヶ月でまとめて、続けてもここで辞めてもどっちでもいいように調整します。
今回もそうしていたんですが、スパモンに突然内容を変えられて、仮入会期間は残り一ヶ月となりました。
入会しないなら一ヶ月でスパッと終われる軽い内容を教えた方がいいし、続ける意思があるなら年単位で教える内容を今から始めても問題ありません。
そこで継続の意思を訊ねるとスパモンは「その方向で」「前向きに検討します」とまるで政治家みたいな言葉を返してきました。
あ、これはヤバいやつや……
僕はそう思い、スパモンに「では継続の方向でレッスンを続けます。ちなみに今からやる内容は年単位で続けないと意味がないので、また突然変更したり、やっぱり入会しないとなるとものすごく中途半端なところで終わってしまいます。そうなるとお子さんのレッスンが無意味なものになってしまいます」とちゃんと説明しました。
しかしスパモンはやはり「前向きに継続を検討云々」と政治家口調でしか答えません。
かなり不安になりながらも、スパモンの口からはっきりとした回答を得ることは無理だと悟り、一応建前として言っている長期継続を念頭にレッスンを進めていくことにしました。
そこから一ヶ月が過ぎ、入会の意思決定と支払いの日がきました。
僕は内心入会しないだろうなと思っていましたが、スパモンは拍子抜けするほどあっさり入会し、ちゃんとお金も支払ってくれました。
色々大変だったし、嘘や脅迫もあったけど、その都度しっかりと説明してきたからやっと理解して信用してくれるようになったんだろう、やはり人と人はちゃんとコミュニケーションを取って、納得いくまで話合えば理解しあえるんだ!と青臭いことを考えて安心していた自分を殴りたいです。
入会から一週間もしないうちにスパモンからメールが来、嫌な予感がしました。
開いてみると以下の要求がありました。
・レッスン方針のことで再度話し合いがしたい
・話し合いが自分達の希望に添わない結果となった場合は退会する、その際入会金と月謝を返してほしい
あまりにも身勝手で理不尽な要求に怒りすら湧かず、ただただ呆然としてしまったのを覚えています。
そしてすぐに感じたのは後悔でした。
おそらくスパモンは嘘と脅迫で内容を変更させたことに味を占めたのでしょう。
「こいつ退会ちらつかせたら何でも言うこと聞くわw」と。
だから今回も話し合いの前提として退会と入会金・月謝の返却をカードにして全面に出し、要求を呑ませようとしたみたいです。
ここで僕は完全に正気に返りました。
こちらの返信としては、
・話し合いは可能(ただしその時間はレッスン1コマとして処理する)
・入会金・月謝の返却は不可
これをはっきりと告げました。
するとスパモンはなんと、「では今月で退会します、話し合いはもう結構です」と返してきました。
話し合いええんかーい!!!
やはり講師を言いなりにさせたいだけだったようです。
もうここまでくるとこっちも知りません。
退会を受け入れ(返金は拒否)、無事スパモン追い出しに成功しました。
その後スパモン親子は残り三回のレッスンは来ると言っていたのですが、二回目の前日に突然もう来ないと告げてきました。
最後の最後まで本当に好き放題で呆れ果ててしまいましたが、もうこの時点で僕は二度と子供のレッスンは行わないと決めていたので、これで少なくとも教室では一生モンペと関わらなくて済むことが確定し、晴れ晴れとした気持ちになりました。
以上が僕のモンペ体験です。
ではここで僕が遭遇したモンペの生態をご紹介しましょう。
あくまで個人の体験によるものです。
・モンペはモンペ面していない
モンペの中に「いかにも」といった様相の人は、僕が出会ったかぎりでは一人もいませんでした。
むしろ普通の印象で、どちらかというと優しそうだったり、へりくだった人が多いです。
容姿でモンペを見極めるのはかなり難しい気がします。
・モンペとは分かりあえない
モンペは人間のルールや感情、慣習、常識が分からない生き物です。
だから”モンスター”と呼ばれるのでしょう。
ですからモンペと人間が共通理解を得ることは不可能です。
保護者がモンペだと分かった時点で話合いや妥協点を見つけることはあきらめましょう。
・モンペに返報性はない
返報性とは、何かしてもらったらお返しをしなきゃという気持ちです。
モンペの理不尽な要求を飲み、『こんな特別なことをしてあげたんだから、相手は借りがあると思ってもう何もしてこないだろう。こっちは貸しがあるから一回はこっちの都合も聞いてくれるはず』と思うのは甘いです。
モンペは一度要求が通ったら、そこをスタンダードにしてきます。
そして、そこからさらに理不尽な要求をあの手この手でつきつけてきます。
・モンペの基準は従うか従わないか
モンペは相手が自分の要求に従うか従わないかの二択で判断します。
従う人間はターゲットにして骨までじゃぶりつくそうとし、従わない人間は無価値なのですぐに捨てます。
・モンペは要求を拒否すると去る
モンペは相手から自分の要求を拒否されると、100%去っていきます。
これまで、要求を拒否してそのままレッスンを継続したモンペは一人もいませんでした。
僕なりのモンペ撃退法を書いておきます。
僕はモンペ専門家ではないので対応した数は少ないですが、効果は誇張なしに言って100%です。
方法は簡単です。
規約やルールに反する要求をきっぱりと拒否すること。
これだけです。
モンペは自分の要求に従わない人間を相手にしない習性があります。
ですから、従わない意思をはっきりと示すとモンペの方から去っていってくれます。
大事なのは変に含みを持たせたり、妥協しないこと。
そして、覚悟を決めることです。
『この人が辞めたらその分収入が減るし…子供も楽しんでくれているし……』という気持ちをちょっとでも見せるとモンペはそこにつけ込んできます。
ですので、完全に切る覚悟で要求を拒否しましょう。
そうすると間違いなく向こうから辞めると言ってくるか、もう来なくなります。
もちろんこれは教室や習い事、あるいはお店などでの有効な手段であり、学校など長期的な付き合いを余儀なくされる場ではまた違った対応が必要となってくるのでしょうが。
モンペを撃退するためには教室のルールをしっかりと定め、明文化して入会時にちゃんと同意をもらっておきましょう。
僕の場合はフォーム送信時に同意にチェックを入れてもらうようにしています。
改めて考えると、僕はわりと早い段階でモンペを撃退できています。
普通レベルのモンペなら一発目の理不尽な要求を拒否して終わり。
スーパーモンペでも二回目で仕留めました。
検索するとモンペの理不尽な要求に長期間耐え、人間不信に陥ったといった例も出てきます。
そう考えると被害は軽い方なのかもしれませんが、それでももう二度とモンペには関わりたくありません。
モンペ事案は子供が絡んでいる分、後味が悪いからです。
特にスーパーモンペのような親に育てられた子供がどうなってしまうのかを考えるとやりきれない気持ちになってしまいます。
ですので僕はもう金輪際教室で子供にギターを教えないことに決めました。
これを書いていて、じゃあまともな親ってどれだけいたっけか?と考えてみたんですが、一向に思い出せません。
嘘だ、世の中にはモンペしかいないのか?
今まで未成年をかなりの数教えてきたのに、全員モンペだったってこと??
とゾっとしたんですが、次の瞬間真相が浮かんで安心しました。
そう、まともな親は習い事程度で前に出てきません。
まともな親なら子供にお金を渡して、「はい、これで習ってきな」と放置します。
もちろん教室に顔を出すこともありません。
仮に教室に顔を出すとしたら最後の最後、どうしても大人同士で話合わないといけなくなったときです。
もちろん、僕は生徒さんとそこまでのトラブルになったことがないので、まともな親の顔を知らないままほとんどの優良な生徒さんは辞めていきました。
だからまともな親の顔が浮かばないのです。
それが分かるとなんだか安心できるようになりました。
それでももう子供に教えることはありませんが。