スタジオミュージシャンになりたいというギタリストは、いつの時代も一定数います。
そこで、これができればスタジオミュージシャンになれる、しかも引っ張りだこの売れっ子になれるというギタースキルがあるのでご紹介します。
これは「たぶん」とか「運が良ければ」ではなく、絶対です。
実際に制作側の人間からもそういうスキルを持ったギタリストを探しているという話を聞きます。
本気でスタジオミュージシャン目指している人は真剣に読んでください。
まず前提を書いておきます。
・ギターの基本スキルをマスターしている
・譜面が一応読める(そこまで高いスキルでなくてOK)
・トライアド、7thコード、テンションを知っており、ヴォイシングが作れる
・社会人としてちゃんとしてる(挨拶、遅刻しない、締め切りを守るetc)
これだけのものは最低持ち合わせていることを前提に話を進めていきます。
今音楽制作の現場で求められているのは、アンサンブルを邪魔しないギターです。
ではアンサンブルを邪魔しないとはどういうことか?
周波数とハーモニーを上から下までごっそり使おうとしない。
これだけです。
これができないギタリストが多いから、制作側の人たちはギターに頭を悩ませているのです。
ギタリストがギター独特のサウンドとハーモニーで周波数を上から下までごっそり持っていこうとする→それでは成立しないのでエンジニアが修正する→時間がかかる→コストがかかる→ウゼえ!
これが現場のギターに対する声です。
ということは、この逆をやればいいということです。
つまり、
ギタリストが適切な帯域のサウンドとハーモニーで狭い周波数でプレイしてくれる→エンジニアは必要最低限の修正で済ませられる→時間とコストが下げられる→最高!次も呼ぶわ!!
現場のニーズに応えられる人が仕事に呼ばれる、簡単お話です。
ギタリストの常識はアンサンブルの非常識です。
まずは周波数。
ギターという楽器は周波数のレンジが広いことで知られています。
周波数が分からない人は低い音から高い音まで出ると想像できればOKです。
問題は、ギタリストが100人いたら95人ぐらいはこの低い音(周波数)から高い音(周波数)まで全部出したがるというというところ。
ローはお腹に響くほどズンズンと、ハイは耳に痛いほどキンキンに、それでいてミドルもしっかりせり出して……
これがアンサンブルにとっては本当に邪魔なんです。
さらに近年はギター界にレンジ旋風が吹き荒れ、レンジの広いギター=いいギター、レンジの広い音=いい音という風潮が出来上がってしまったため、ギターがアンサンブルのレンジをフルにカバーしてくるということもあるそうです。
そんな音作ってもミックスで削られるだけなのに……
また、そんな邪魔な音を作っておいていざミックスでイコライジングをされると「俺の音じゃない」と文句を言うのがギタリストです。
そんな人でも仕事に呼ばれるのは、仕方ないから、他にいないからでしかありません。
ギタリストは、ハーモニーでもアンサンブルの邪魔者です。
例えば譜面に「G」と書いてあったとき、ほとんどのギタリストは次のコードを押さえるでしょう。
Gのヴォイシング例①
これがどれだけアンサンブルにとって邪魔か分かりますか?
分からないギタリストはやばいです。
理由は多いので箇条書きにします。
・6弦のルート音がベースとかぶる
・低音部(6・5弦)で3度のハーモニーを作られると主張が強すぎる
・音が多すぎてピアノとぶつかる可能性がある
・エレキギターの開放弦は倍音が出すぎて扱い辛い(特にリアPUでこんなコード弾かれたら最悪)
・周波数取り過ぎ
3ピースのギターロックなど、こういったコードを弾くことが前提の音楽であれば問題ありません。
しかし、それ以外ではこんなローコードは邪魔でしかありません。
じゃあこれならどうでしょう?
Gのヴォイシング例②
はい、これも一緒ですね。
こっちになると低音部のパワーコードが強すぎます。
じゃあこれは?
Gのヴォイシング例③
上記①②に比べればまだましかもしれませんが、本質的にあまり変わりません。
じゃあどうすればいいのかというと、上記3つをさらに小さくしていきます(後述)。
そうするとアンサンブルの隙間に上手いことはまる絶妙なヴォイシングが見つかるのですが、ほとんどのギタリストはその知識がないどころか、そんなことを考えたことすらありません。
ロック全盛、ギター全盛の時代はそれでもよかったかもしれませんが、これからはもう無理ですね。
ではギタリストはどうすればいいのでしょう?
まずは周波数。
ギタリストは自分の好きな音、一人で弾いていてかっこいいと思える音を作るのではなく、アンサンブルを意識して音作りをしましょう。
アンサンブルを意識した音作りが分からない人は、「音をハイミッドにまとめる」とだけ意識してください。
おおよそ、そこらへんがギターのオイシイ帯域です。
そして、アンサンブルがギターに求めるのはその帯域のサウンドです。
アンサンブルがプロなら、ハイミッドはギターのためにだいたい空けてくれているので、あとはギタリストが自分からそこにスポンと入ってあげれば全て丸くおさまり、『このギタリスト分かってるなー』と評価もあがります。
ポイントは、ギター一本で弾くとなんかペラペラして迫力ないなーと感じるサウンドにすることです。
それぐらいでアンサンブルに交ざるとちょうどいいサウンドになってくれます。
そこから迫力足すためにローを上げ、ギラギラ感を出すためにハイを上げ……としていくからアンサンブルの邪魔になるのです。
アンサンブルのハーモニーをギター一人でごっそり持っていくのをやめ、ギタリストは小さいコードを作れるようになりましょう。
例えばGならこれだけ。
ハイポジションならこことか。
ポイントは低音部を省略しているところ。
これで低周波数がしっかりカットされるので変にイコライザーでローカットしなくてもよくなります。
また、これぐらい小さければピアノやストリングスとぶつかるということもかなりの確率で回避できます。
もちろん楽曲やアンサンブルのサイズによって掴む音は変化していきますが、基本この程度のコードで十分です。
これを「つまんない」と言うギタリストはスタジオミュージシャンは無理でしょう。
仮に今は使ってもらえているとしても、小さいコードが弾ける人が見つかったらお払い箱になるでしょう。
逆に言えば、こうした小さいコードが弾けるようになると、それができないギタリストを押しのけて仕事が取れるということです。
上記の周波数のレンジを狭めることと、ヴォイシングを小さくすることだけでもスタジオミュージシャンとして重宝されると断言してもいいですが、さらにもう一つ。
それは入力の強さです。
これはちょっと文章では説明し辛いのですが、エレキギターを弾いて、録音したときに入力が強ければ強いほどミックスがやりやすくなります。
ちなみに、音量のことではありません、「入力」です。
「アタック」と言ってもいいでしょう。
ギターがしっかりとした入力で録音できていれば、エンジニアはフェーダーを下げながら調整できます。
逆に入力が小さければ変にアンサンブルに埋もれるので、前に出すためにあれこれプラグインをかまさないといけなくなります。
ではその強い入力をどこで作るのか?
それはピッキングです。
「ギタリスト身体論3」で公開したMP関節の調整で強い入力は作れます。
ここらへんは簡単に説明できないので本を読むか教室に習いにきてください。
まあ入力はいまいちでも周波数とヴォイシングが適切なら全然スタジオミュージシャンとして呼ばれると思いますが。
こうしたアンサンブルを意識した音作りやヴォイシング、きちんとした入力でギターが弾けるプレイヤーは今ほとんどいません。
ギタリストはまだまだ王様脳、ヒーロー脳でギターを弾いているからです。
一方で、現場はこういったことができるギタリストを探しています。
ということは、今がチャンスです。
今のうちにこうしたアプローチを身につけておき、誰よりも早く現場で使っていくと、早々と使えるギタリスト認定されてバンバンレコーディングに呼ばれるようになることは間違いありません。
もちろん基本的なプレイがちゃんとできるとか、人としてちゃんとしていることが前提ですが。
こうしたことが知りたい、身につけたいという方は教室までご連絡ください。
習得は実は簡単だったりします。
もちろん、ギターは王様だ!を貫きたい人はそれはそれで格好いいと思います。
ダイアグラム作成サイト