2012年から発表してきた「未来撃剣浪漫譚」シリーズの最新作「未来撃剣浪漫譚 Last Paradise」が刊行されました!
現在KINDLEのみですが、いつものように楽天とBook Walkerでも追って刊行します。
本作は撃剣シリーズ4作目にして、久々の長編です。
最終的に400字詰め原稿用紙340枚と、ややコンパクトな長編になりました。
2021年末に「ギタリスト身体論3」を刊行し、
明けて2022年頭から取りかかってきたので、1年3ヶ月ほどかかったことになります。
……ちょっと遅いですね。
まあ職業小説家ではないのでいいんですが。
なにせ長編小説は2014年の「未来撃剣浪漫譚 Human Possibility」以来8年ぶりの執筆になるので、最初はなんか勝手が分からずに苦労しました。
去年の秋ぐらいから調子が出てきた感じです。
本作はシリーズものですが、ここから読んでも一応楽しめるとは思います。
ただ、ちょくちょく出てくる固有名詞や、主人公が何に苦しんでいるのか、そもそも何をやっていたのかを知るためにはシリーズ1作目から読まないと分かりません。
興味を持っていただいた方はぜひ最初からお読みください。
以下、本作の特徴です。
僕はそもそも純文学よりの人間で、「ADAUCHI」も純文学の匂いがするというレビューなどがあったぐらい影響が出ていたようです。
その後エンタメと純文学の違いがようやく自分の中で別れてきたのが3作目の「Anthology」でした。
しかしそこからピッキング研究を開始するために小説は断筆しました。
そして2022年から改めて長編エンタメを書くにあたり、一番の課題は文体でした。
さて、本作「Last Paradise」では、可能な限り描写を削ったソリッドな文体となっています。
圧倒的な描写力で作者の持つ世界観に読者を引き込むのではなく、読者の持つ世界観を邪魔しないために描写を削りに削る、そうすることで作品の世界を豊かにするという試みです。
読者は自分の想像力を邪魔する描写がないので、自由に作品世界を思い描ける……という文体になっているはず!
成功しているかどうかは知らん…
noteでも書いたと思いますが、プロットは以前から意識して使っていたテクニックを今回も使っています。
名付けて「リエゾン」です。
「リエゾン」とはフランス語の文法で使われるもので、前の単語の語尾と次の単語の頭がくっつくという現象です。
小説のプロットとしては、ある出来事と次の出来事をきっちり分けずにくっつけることを指します(僕の造語ですが)。
例えばある事件があり、それをきっちり解決させてから次をはじめると、プロットに贅肉が付き、重たくなります。
話数が区切られている漫画ならまだいいのですが、長編小説でそれをすると停滞感が出て読むのに疲れてしまいます。
ですので、ある事件が解決するかしないかのうちにもう次の事件を起こしたり、新しいキャラクターをいきなりぶっこんだり、次のプロットに強引に持っていく。
それが「リエゾン」です。
「ADAUCHI」の後半、主人公一行が京都に着いてからの流れは「リエゾン」で書いています。
これがとても評判が良かったので、今回はその「リエゾン」をできるだけ最初の方からやってみるつもりで書きました。
結果的には前半1/3ぐらいはひとつの出来事をきっちり終わらせて次となっていますが、残り2/3はたぶんずっとリエゾンしています。
1/3以降は文体とあいまってページをめくる手が止まらない……となるはず。
以前から使っていたテクニックですが、今回は今まで以上に「回想型プロット」を多用しています。
これは「進撃の巨人」や
「魔道祖師」
で多用されているプロットで、出来事を最初から時系列で描写するのではなく、出来事の途中からはじまり、そこに至る経緯を回想で回収しながら進めていくというもの。
こうすることで余計な描写を省くことができ、プロットにスピード感が生まれます。
僕は上記二作品が大好きで、本作執筆前の時点でかなり影響を受けていたので、自然と取り入れることになりました。
たぶん現代的なプロットになっていると思います。
回想シーンに着目して読んでみてください。
エンタメ小説はキャラクター命です。
「ADAUCHI」を書いたときは「富樫システム」を採用しました。
「富樫システム」とは、冨樫義博先生の漫画のように、主人公よりも魅力的なキャラクターを登場させることです。
人気投票したら主人公が3番手ぐらいになるのが理想です。
その後、2作目の「Human Possibility」では、
迷ったら新キャラを出して解決、という作戦をとりました。
これはこれで評判がよく、成功したと思います。
ただ僕のクセなのか、迷ったらつい忍者を出してどうにかしようとしてしまいます。
今回も予定していなかった忍者キャラが出てきています。
登場したら『あ、八幡ここで迷ってたんだw』と思ってください。
キャラクターって、練りに練って出すと説得力や魅力が上がることが多いんですが、一方で置きに行った感じや、プロット上の必然(作者の都合)が見え隠れして逆に生きてこないことがわりとあります。
僕の場合は「ADAUCHI」でキャラがテンプレっぽいというご批判があり、それを克服するための手法として、迷ったり悩んだりしたらキャラで解決としています。
そうするとキャラの登場に必然性が出たり、自分でも知らないキャラが出て置きに行った感がなくなります。
今回は恐らく過去一で多彩なキャラが登場するのでお楽しみに。
個人的に好きなのは、白い空間に出てくるあの人と、〈ひかりのらくえん〉の後半で出てくる怪しい女性です。
これもたぶんnoteに書きましたが、個人的に「どんでん返し」「驚愕のラスト」「伏線回収」といったエンタメ作品の必須要素があんまり好きではありませんでした。
どれも表面的な技法で、物語の本質には届かないからです。
とはいえ、やはりそれは純文学的な価値観で、もっと言えば純文学至上主義であるということにも気が付いていました。
主題で勝負する純文学の方が上という傲慢な価値観です。
そこらへんが分かってきたので、今回は恐らく初めて意識してエンタメ的要素を盛り込んでみました。
「え、まさかこいつが!」
「真相はそうだったのか!」
「あれとあれがつながった!」
と驚いてもらえれば嬉しいです。
バレバレだったらどうしようと不安で仕方ないですが…
小説というものは読者が読んではじめて完成します。
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