昨年末、作業のBGMに久々にボンジョビを聴いていたらハマってしまい、改めてボンジョビの凄さを認識しました。
何が凄いかって、2023年でも全然聴けることです。
特にびっくりしたのが「It's My Life」で、リリースは2000年ですが今年出した楽曲と言っても全然通用するぐらい違和感なく聴けました。
改めて聴くとボンジョビってロックの基礎なんですね。
極論すればこの「It's My Life」を徹底的に分析すればそれだけでロックの基礎が8割ぐらい分かるのではないかと思います。
もちろんそれだけで十分とは思いませんが、変な作曲講座観るぐらいならこれやっとけばかなり作曲力、アレンジ力がつくと思います。
ということで、以下解説してみます。
本気で学びたい人は全パートを一度DTMで打ち込んでみることをおすすめします。
脳内から中山きんにくんは一度捨ててください。
MVはややドラマ仕立てになっているので、できれば音源かライブ映像を観ましょう。
BON JOVI | ボン・ジョヴィ - UNIVERSAL MUSIC JAPAN
「It's My Life」は”キャッチー”の一言に尽きます。
では”キャッチー”とは何か?
私見ですが、キャッチーとは瞬発と継続だと考えられます。
楽曲の中で、一度のみならず何度も何度も瞬間的にリスナーの心をキャッチし続けることです。
じわじわと盛り上げてサビで最高潮に達するというのでは遅いし、サビ頼みだと他のセクションが退屈になります。
イントロでキャッチし、Aメロでもキャッチし、Bメロでもキャッチし、サビでまたキャッチする……
このように何度も何度もキャッチされるとリスナーは楽曲の虜になってしまいます。
「It's My Life」は正にそういうギミックが随所に施された楽曲なのです。
イントロでいきなり3つもキャッチー要素が盛り込まれています。
キャッチー1 特徴的なピアノフレーズ
ロックでは比較的めずらしいピアノリフでのイントロが耳に残ります。
キャッチー2 キメ
「ダンダン」というリズムのこと。
サビ前の複線でもあります。
キャッチー3 トーキングモジュレーター
ちょっと聞き取り辛いかもしれませんが、ギターの音が人間の声みたいになっています。
これは名曲「Living On a Player」のセルフオマージュでしょう。
イントロで同じサウンドが聴けます。
この3つのキャッチーな要素をたった4小節に納めているところがとても現代的です(執筆時2023年1月)。
これを8小節とか使って構築していたとしたら、今聴けばもう古くさく感じるでしょう。
2000年といえばまだipodも出ていないし、インターネットも今ほど発達していない、まだまだのんびりした時代です。
その時代にここまで切り詰めたアレンジをしていたというのが驚異的です。
キャッチー4 ブレイク
Aメロはブレイク(楽器の演奏が止まること)で入ります。
メロディは全然大したことないんですが、ブレイクすることで歌が浮き立ってなんかよさげな気がしてきます。
これも楽曲をキャッチーにする効果的なテクニックですね。
また、同じブレイクを2回続けないところがスマートです。
2回もやるとしつこい気がします。
キャッチー5 イントロの継続
Aメロをよく聴くとイントロで使っているリズムやリフが継続されていることが分かります。
イントロだけで捨てるのではなく、Aメロにも使うことでキャッチーさが継続している気がします。
Bメロにはキャッチーな要素は見当たりませんが、4小節でサラっと流すことで退屈さを回避しています。
この感覚も現代的でとても2000年の曲とは思えません。
キャッチー6 キメ
イントロで使っていた「ダンダン」というキメをサビ直前に持ってくることでサビへの瞬発的な盛り上がりを作ります。
ここで突如出てきたキメではなく、イントロで伏線的に使っているというのもポイントです。
キャッチー7 It's My Life
恐らくこの曲の最大のキャッチーポイント。
一度聴いたら誰でも「(ダンダン)イッツマイラーイフ!」と歌いたくなってしまいます。
きんにくんがこの曲を選んだ理由もよく分かります。
ちなみに、サビ2回目の「It's My Life」はサラっと入っています。
これもAメロの構造と同じです。
2回目のAメロBメロサビは、若干変化はありますが特に新しいキャッチー要素はありません。
この辺はやや古い曲といった印象が出ますね。
今どきの曲ならもっとあれこれ詰め込むでしょう。
キャッチー8 スカし
3回目のAメロはこれまでのキメやリフを踏襲せず、あえてスカして雰囲気を変えています。
これまで当たり前だったフレーズやリズムが急になくなったので「なんだなんだ?」となります。
ここでまたBメロに行くとさすがに退屈に感じてしまいそうです。
キャッチー9 メロディの変化
最後のサビで突然メロディラインが高くなります。
一瞬転調したのかなと思ったのですが、キーは変わっていないようです。
ここでキーを上げてもいいのかもしれませんが、そうするとちょっとうわずった感じになったり、ロック独特の楽曲の一貫性が薄れてしまう可能性もあるので、キーはそのままでメロディラインを上げるというのがちょうどいい選択かもしれません。
キャッチー10 ダメ押しの「It's My Life」
最後の最後でまた「It's My Life」で終わっています。
これもシメとして一緒に合唱したくなりますね。
もしこれがなかったらラスト数秒で曲を飛ばされる可能性が高くなるでしょう。
2000年頃はまだ今ほど曲を飛ばす人も多くなかったのですが、その時代に「飛ばされないために」と考えてアレンジしていたとしたらもはや予言者ですね……。
最後に、メロディの美しさやグルーヴ感などは才能も必要になりますが、ことキャッチーさに関してはほぼ100%計算できるので、勉強すれば誰でも出せるようになると思います。
そもそもこの曲もそこまで美しいメロディでもないし、グルーヴも超人的ってほどでもないし、超絶テクニックを使ってるわけでもないし、アレンジも奇抜なところはひとつもありません。
ただ計算し抜かれたキャッチーさで時代を越えてロックの名曲の仲間入りを果たしています。
自分に才能がないことが分かってしまったミュージシャンは、キャッチーさの研究に全能力を捧げるとワンチャン食える可能性が出てくると思いますよ。
それでは最後になかやまきんに君の雄姿をどうぞ。