ジャズスタンダードの「'Round Midnight」という曲があります。
ジャズミュージシャンなら必ず一度は演奏する曲です。
作曲者はセロニアス・モンクというピアニストですが、ジャズの特性上いろんな人がカヴァーしていて、その中でもマイルス・デイビスのレコーディングが決定版だとされています。
モンクの演奏
マイルスの演奏
一聴するとたぶん10人中9人ぐらいはマイルスの方が格好いいと思うでしょう。
僕もつい最近までそう思っていました。
しかし、改めてマイルスのヴァージョンを聴くと「なんかスカしてやがんな」とかっこつけ具合が鼻について、没頭できなくなっていました。
そこで改めてモンクの演奏を聴くと、なんとなく楽曲が持つ原風景が見えた気がして、モンクが表現したかったことが分かった気がしました。
ちなみにモンクはマイルスの'Round Midnightに「そうじゃない」とずーっとダメ出しをしていたと伝記に書いてあり、マイルスは「うっせえ」と反抗していたものの、一度だけモンクに「そうだ」と褒められて嬉しかったみたいなエピソードがあったはずです。
うろ覚えなのであしからず。
このエピソードがずっと引っかかっていたんですが、やっと理解できた気がします。
マイルスの演奏って、田舎から都会に出てきた野心満々の小僧がやっと金と権力を手にして、タワマンの上の階から高級酒片手に都会の夜景を見下ろしているような印象です。
一方モンクの演奏は、野暮ったくてどこかしみったれた感じがしますが、他のヴァージョンにはない独特のワイルドさがあります。
キラキラした都会の曲ではないんですよねえ……
もちろんジャズなので、それぞれの'Round Midnightをやればいいんですが、原曲そのものが何を表現しているのかを見誤ると取って付けたようなものになってしまいます。
この辺はロックもポップスも同じでしょう。
余談ですが、「'Round Midnight」というタイトルのジャズ映画もあり、デクスター・ゴードンが主演しています。
面白いのでよかったらどうぞ。