仕事というものはだいたい分担作業になっています。
自分がやることをやって後は別の担当に渡す。
その作業をどういうマインドで行うかでその先の広がりや自分への評価が変わってきます。
特にフリーの人は。
例えばギターのレコーディングがあるとします。
誰かにギターを頼まれて、録音し、素材を渡してミックスしてもらうとしましょう。
それ自体仕事でも趣味でも構いません。
このとき、自分の好みのサウンドで好き勝手にプレイするだけの人と、ミックスを考えたサウンド、プレイをする人がいたら、当然後者の方が印象がいいはずです。
ミックスでの作業が少ない方が楽だし、前者によっぽど光るものがなければ後者がまた呼ばれるでしょう。
だから僕は教室でミックスしやすいギターを教えています。
定位を前に出すピッキング(「ギタリスト身体論3」掲載)、アンサンブルで邪魔にならないヴォイシング、他の楽器と周波数がかぶらないサウンド……。
うまくいけばイコライジングなどしなくてもそのままスポっとオケに入れるだけで成立します。
実際、生徒さんからもそういう反響をいただいています。
ギターで仕事をするということは、こういうところに気を付けることでもあります。
もちろんそれだけではありませんが。
そんなことを考えていたらふと思い出したことがありました。
僕は2009年から教則本を書き始め、その都度出版社と作業を進めてきました。
1冊目から僕が意識してやっていたことは、編集者に楽をさせるということです。
本来作家の仕事は文章を書くことです。
企画、構成、見出しやタイトル考案、誤字脱字チェックは編集者の仕事となります。
まあその配分は会社の方針、編集者の気質、作家との関係性などによって変わってくるのでしょうが。
僕は教則本の執筆において、一環して企画・プレゼン、構成、執筆、見出し・タイトル考案、図・イラスト・譜面作成(ラフ)、校正・校閲などを可能な限り自分で行ってきました。
もちろん編集者も手助けしてくれましたが、気持ち的には編集者には何もさせないつもりで完パケを目指して毎回書いていました。
ですので、編集者はものすごく楽だったのではないかと思います。
他の作家さんがどこまでやるのか知りませんが……
たぶんそういう仕事の仕方もあって、何冊もポンポン出させてもらえたのだろうと推察します。
文章だけ書いて「あと編集でつないでおいて」なんてやってたらすぐに見限られていたでしょう。
それと同じで、好き勝手にギター弾いて「あとはミックスで適当にしといて」「あ、イコライザーかけてもいいよw」とかやってるとすぐに呼ばれなくなるでしょう。
相手にどれだけ楽させるかを考えて仕事をすれば、大抵は上手くいくと思います。
まあその分こっちに負担がかかるのでほどほどにしておくことも必要ですが。