Apple Musicでいろんな音楽を聞いていると、改めてJ-POPの音が気になってきました。
今回はJ-POP独特の分離感の悪さについて考えてみたいと思います。
といってもかなり適当な想像なので真面目に受け取らないでください。
全ての音源を聴いて、全ての製作過程を見たわけではないので。
日本の音楽シーンでは、かつてエンジニアの地位がとても低かったというのは有名な話です。
アーティストやプロデューサーに怒鳴られ、殴られ、奴隷のようにこき使われて育ってきたというエンジニアはいくらでもいるでしょう。
恐らく、2000年代まではそんなのが当たり前だったと思います。
その後DTMが普及し、アーティストや作曲家でも普通にミックスし完パケまでつくるようになって、エンジニアという地位が認められてきたように思えます。
とはいえ、まだまだアーティスト>エンジニアという関係性は根強いのではないかと思います。
特に僕よりも上の世代は…
この辺を前提に話を進めていきます。
日本人は機材に対するこだわりがかなり強いと思います。
それは僕の海外経験からもはっきりと言えることです。
わけわからん機材使ってる外国人アーティストっていっぱいいますよね?
日本のギターメーカーがあるアメリカ人ギタリストのシグニチャーモデルの製作をするにあたって要望を聞いたところ、さぞ細かな指示があるだろうと身構えていたら、ボディの形しか指定がなく、音に対しては何の要望もなくて肩透かしを食らったなどという話もあります。
そんなこだわりの強い日本人アーティストの音を録る際、当然そのこだわりをきちんと録れるよう工夫します。
あるいは、アーティスト自身はそんなにこだわりがなくても、エンジニアの方が音にこだわりがある場合もあるでしょう。
そうして各楽器をいい音で録音します。
すると、当然のようにそれらは干渉し合います。
例えばギタリストが作るいい音は、だいたいハイからローまでレンジの広い音になります。
リフを刻めばローがズンズンと腹に響き、ギターソロはハイがキラキラして抜ける、それでいてミッドも張りのある音……。
確かに理想ではありますが、そんな音アンサンブルで使えるわけありません。
ベースもドラムもピアノも、全ての楽器において同じです。
そこでミックスの技術が必要となってくるのですが……
以下想像です。
アーティストこだわりのいい音で各楽器が録れました。
しかしそれをそのままオケに入れただけでは干渉しあってボケてしまいます。
そこで様々なテクニックを使ってオケになじませていくのがエンジニアの仕事です。
しかし、地位は上がったとはいえエンジニアは心理的あるいは本能的にアーティストの音を大胆にいじれません。
もちろん、立場だけではなく、アーティストにとって最高の音を再現してあげたいという情熱もあるでしょう。
と同時に、音楽そのものを最高の音にしてリスナーに届けたいという熱意もあります。
エンジニアは、アーティストからのプレッシャー、リスナーへの誠意、エンジニアとしての情熱や矜持などで押しつぶされそうになります。
その結果、エンジニアは全方向的に忖度せざるを得なくなります。
アーティストも満足し、プロデューサーも納得し、リスナーもがっかりさせない音。
その結果生まれるのがJ-POP独特の分離感の悪い音ではないかと想像します。
仮にミュージシャンに1ミリも忖度しなくていいとしたら、もっと大胆に各楽器を処理でき、結果分離感のいい音源が出来上がるのではないかと想像します。
まあ、分離感が悪いなんて文句を言う人は音楽リスナーの1割もいないと思いますが。
でも、分離感のいい音を聴くと本当に気持ちがいいんですよね。
各楽器もとてもクリアに聞こえてくるし(たとえそれがアーティストの理想の音でなかったとしても)。
改めて言うと、上記はただの妄想なので、本当にミックスの現場でそんなことが起こっているかどうかは知りません。
まあでも、ないこともないと思いますが。