エレキギターで意外とみんな適当に処置しているのが、ピックアップの高さ調節。
横浜ギター教室で生徒さんのギターを見ると、9割以上『ん?この高さ??』と感じます。
そこで「ピックアップは意図してこの高さにしてますか?」と訊くと、これも9割以上「最初からこうなってて、いじってません」とか「調整したことないです…」と返ってきます。
なので、その場で軽く調整してあげると、音が全然変わってびっくりされます。
このピックアップの調節が意外と難しくて勘所が要るので、今日はそのへんをご説明します。
ピックアップは、弦の振動を拾うマイクです。
マイクに向かってしゃべったり歌ったりするときのことをイメージすると分かりやすいと思います。
近すぎると歪んだり入力過多になってしまうし、遠すぎると声が拾いきれずに小さくなってしまいます。
ギターでいうと、
- PUが弦から遠い
音が小さくなる
楽器のキャラクターが出辛い
PUの個性が消える
- PUが弦に近い
ブーミーな音になる
楽器のキャラクターが分かり辛くなる
PUの個性が出すぎてうるさい
だいたいこんな感じになります。
弦から遠い場合、ハムバッカーを弾いているのにハムバッカーらしくない音がしたり、その楽器の個性が全然見えないことが多いです。
一方、弦に近すぎると一見パワーがあっていいように錯覚するけど、ブーミーで入力過多となり、逆に個性が見えなくなります。
PUは近すぎてもダメ、遠すぎてもダメ、ちょうどいい位置に調節する必要があります。
それってどうやるの??
ピックアップも電子機器なので、オーディオのようにエージングが必要となります。
新品を換装した場合は5日~1週間ぐらいは待ちましょう。
もちろんその間ちゃんと弾くことも必要です。
ある程度弾いて音が落ち着いてきたと感じたら以下の調節をしてみましょう。
エージング前にラフに調節して、エージング後にまた調節というのでも構いません。
何事も最初は極端にやってみると効果が分かりやすいものです。
まずはPUを極端に上げたり下げたりしてみましょう。
このとき気を付けてほしいのは、ネジがPUから外れてしまうことです。
ネジの長さが足りないと、PUを上げていったときガコンと外れてしまい、取り出すためにピックガードを外さないといけなくなります。
PUを極端に上げ下げして音の違いを確認したら、そこからちょうどいい位置を探っていきましょう。
- 極端に下げた状態から
PUを少しずつ上げていきながら、ギターのキャラクターが出てくるのを確認する。
どこかの時点でキャラクターが強くなりすぎるので、その手前あたりでストップ。
そこから下にスイートスポットがある。
- 極端に上げた状態から
PUを少しずつ下げていきながら、ブーミーさが消えていくのを確認する。
どこかの時点でキャラクターが薄くなりはじめるので、そのあたりでストップ。
そこから上にスイートスポットがある。
これでスイートスポットの範囲が特定できます。
初心者の方は、分からなければこのスイートスポットの範囲内で適当に止めてもかまいません。
もう少し詰めたい人はさらにベストポジションを探りましょう。
ただし、それを聞き分けるには相当な熟練が必要となります。
まずはそのギターのことをどれだけ知っているか。
そして、シングルならシングル、ハムならハムの特徴をどれだけ知っているか。
さらに自分が出したい音をどれだけイメージできているか。
反応のいいギターなら、最終的にはネジ1/8周ぐらいまで詰められると思います。
ヴィンテージ感が欲しい人はやや低め、パワー感やレンジ感が欲しい人はやや高めがいいでしょう。
さらに難しいことを言うと、その楽器が出してほしがっている音を探すという方法もありますが、もうこれは主観でしかないので教えられません。
僕はとりあえずその楽器が出して欲しがっている音を探ってから最終的に自分の好みに合わせます。
PUの高さが決まったら、そこからネック、センター、ブリッジと各PUの音量を合わせていきます。
これはたぶんいろんなやり方があると思いますが、僕はそのギターで一番使うPUや、一番いい音がしているPUをベストポジションに固定し、それに他のPUの音量を合わせていきます。
ストラトでネックが一番いい音がしていてよく使うのならそこを固定し、センター、ブリッジをネックの音量に合わせていきます。
レスポールのリアがいい音であればそれを基準にネックを合わせます。
あと、ネックをバッキング用にやや音量を下げて、ブリッジをリード用にちょっと上げておくという人もいるかもしれません。
そこらへんは音楽に合わせて調節しましょう。
PUは平坦なままだと弦によって出力にばらつきが出ます。
一般的に、1弦側をやや高く、6弦側をやや低くします。
1弦6弦と音を出しながら、だいたい同じくらいの音量になるよう調節します。
わからない場合は目視でかるく6弦側が下がってるように調節しておきましょう。
PUが平坦で、1弦も6弦も同じ音量に聞こえるならそのままで結構です。
改めて書いてみると、なかなかの作業量になりますね。
しかも楽器の知識とか経験もかなり必要となるので、やりたがらない人や手が出ない人が多いのもうなずけます。
ただ、エレキギターはPUの調節で見違えるほど音が変わるので、手探りでもいいから調節できるようにしておいた方がいいと思います。
PU調節はやりすぎるともう何がいいのか分からなくなってくるので、ある程度詰めて分からなくなったら一旦そこで放置しましょう。
その音になれた頃にまた高さをいじってみると新しい発見があります。