八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

本気で子供をミュージシャンにしようとする親は、音大までじゃなく一生面倒見る覚悟をしてほしい


八幡謙介ギター教室in横浜

今もクラシックの世界では、子供をミュージシャンにしようと、3歳ぐらいから音楽教育をはじめる親が存在します。

たまにロックやジャズにもそういう親がいますが、クラシックがほとんどでしょう。

それ自体は各家庭の方針なので別にいいんですが、ひとつだけ親に言いたいことがあります。

それは、子供に幼少期から音楽教育をほどこして本気でミュージシャンにするのなら、音大をゴールにするのではなく、最低でも30まで、できれば一生面倒見る覚悟をしてほしいということです。

 

子供をミュージシャンにするということは、つまり、非常識で経済観念に乏しく、一般社会にとってお荷物でギリギリ芸術家として世の中の役に立つかもしれない人間に育てるということです。

将来社会人としてやっていける程度に遊ばせ、一般的な勉強をさせつつ音楽も訓練していけばいいと考える人は甘いです。

物心ついたときから練習練習練習、友達と遊ぶの禁止、ゲーム禁止、TV禁止、スポーツ禁止、ただひたすら音楽だけやってきても成功しない人がいくらでもいます。

バランス取りながら音楽を学ばせて一人前になれるのなら、誰でもミュージシャンになれます。

まあ、目指すところにもよりますが、遊んで学んで音楽もという発想ではクラシックは無理です。

 

以前動画で見たんですが、あるクラシックミュージシャンはやはり幼少期からレッスン漬けの日々。

そうして有名な音大に入り、無事卒業したそうです。

親からは「音大まで行かせてやったんだから後はお前が頑張れ」と言われ、そこでサポートを打ち切られたそうです。

その方は途方に暮れ、社会の厳しさに負けてしまい一度は音楽の道を諦める決意をしたそうな。

一般論でいうと親が正しい、親は責任を全うしたということになるんでしょうが、僕からするとなんて無責任な親だと感じます。

まだ物心ついていない子供を一方的にミュージシャンにすると決めてスパルタ教育、音楽以外何も知らない世間知らずに育てておいて大学を出たら後は自分でなんとかしろというのは虫がよすぎます。

思春期に楽器をはじめた子供にしぶしぶ音大に行かせて、卒業したら後は知らんというのなら分かります。

それは本人がなんとかするべきでしょう。

しかし、親の意思で子供の頃から音楽漬けにしておいて、たかだか大学を出た程度で世間に放り出すのは無謀です。

ちなみに、どんなジャンルでもミュージシャンの世界では一部の天才を除いて音大出たばっかの子なんて素人に毛の生えたようなレベルで、まだまだ使い物になりません。

当然待っていても仕事は来ません。

そこでなんとか社会の中で自分の音楽を売り込む力(営業力、マーケティングセンス、社会の中での自己分析)などが必要となるのですが、音楽しか知らない人がそんなことできるわけがありません。

そうして、ミュージシャンの世界ではまあまあ程度の実力を持った世間知らずの「プロ」が誕生します。

これを作ったのは親です。

この状態のミュージシャンを自分達で作っておいて放置するのは、僕は無責任だと思います。

 

親が自分達の決定で子供をミュージシャンにすると決めたのなら、音大卒業までなんて無責任なことはせずに、せめて30まで食わせてやってほしいです。

音大を22歳で出たらあと8年。

それぐらいの猶予があれば一般常識を勉強しつつ、なんとか社会と音楽の折り合いを自分なりに発見できると思います。

それでも無理な人は無理だと思いますが。

30過ぎてもどうしても食えない、一般常識もないから就職もできないという場合、それはもう親の責任なので目の黒いうちは養ってあげるしかありません。

子供をミュージシャンにするというのは、そういうことです。

 

じゃあ自分の意思で音楽をはじめた子供はどうすればいいか?

それは自己責任なので、ほっときゃいいです。

もちろん親のサポートがあればありがたいに違いありませんが、サポートする責任はありません。

比較的遅くに音楽を始めた子(高校生以上から)に対しては、「好きなことやるんなら自分でなんとかしろ」と突き放した方が成功するケースが多い気がします。