僕は挨拶にはあんまりうるさい人間ではありません。
挨拶の重要性を説く人が日常的に暴力を振るっていたり、自分に挨拶をしなかったというだけでその人の人間性を全否定している輩を見てきたので、きちんと挨拶できる人がそれだけで人間的に素晴らしいとはあまり思えません。
逆に、挨拶できなかっただけで人間的に何かが劣っているとも思えません。
報告も同じです。
ただ、音楽の世界を見ると、結果的にプロや元プロはちゃんと挨拶や報告ができて、プロになれなかった人はそれができていません。
あくまで結果論ですが。
僕が知っている範囲の話です。
あるバンドマンは、ライブにそこそこ偉い人が来ているのを知っているにもかかわらず、挨拶に行きませんでした。
また、彼とその偉い人をつないでくれた人にも挨拶に行きませんでした。
結局そのバンドはデビューできずに解散しました。
ある本気でプロを目指している子は、あれこれ悩んでミュージシャンへの道を断念したのですが、本来なら一番最初に相談もかねて報告しておかないといけないお世話になった方に対し、「そのタイミングで大丈夫か?」という遅さで事後報告していました。
ある元生徒さんは、本気でデビューを目指してバンド活動をしていたんですが、その後風の噂で引退したそうです。
わりと付き合いはあった方なんですが、報告はありませんでした。
その他似たような話は多々あります。
元メジャーアーティストの生徒さんは、仕事の都合で教室に来られなくなった際、わざわざ教室まで来て対面でそのことをご報告してくださいました。
また、あるメジャーのバンドマンは、たった数回しかレッスンに来ていないのに、バンド解散と引退の報告をわざわざ僕にまでしてくれました。
ある初対面のベテランスタジオミュージシャンは、ペーペーの僕に深々とお辞儀をして、「いつか使ってください」とまるで新人がプロデューサーに対してするように挨拶してくれました。
こんな例もいくらでもあります。
個人的に、挨拶や報告がなかった人、遅い人に対して、負の感情は特にありません。
強いて言えば、ちょっと寂しいなーというのと、そんなんで大丈夫か? と心配する程度です。
一方、挨拶や報告をきっちりしてくれた人に対しても、特別好意を抱くとか、ひいきするということもありません。
ただ、こちらは圧倒的な好印象が残ります。
たぶん、違いはそこでしょう。
同じくらい楽器や歌が上手くて、おなじくらい容姿がよかったら、あとは印象の差ぐらいしかありません。
その差でプロになれなかった人はいっぱいいるんじゃないかと思います。
だからといって、挨拶をしっかりしていればプロになれるというわけではありません。
高い技術やクリエイティビティ、その他いろんなことを持ち合わせて、それプラスちゃんとした挨拶と報告ができるかどうかってことです。
ただ、これらは水と油でもあるので、なかなか両方持ち合わせている人というのは少ないような気がします。
社会人としてちゃんと振る舞えて、しかも音楽的に高いセンスを持っているというのはある意味奇跡のようなものです。