ここ数年、僕がギター教室の価値を上げるためにしていることをお教えします。
やろうと思えば誰にでもできます。
その前提として、ネット社会やネットと人のこれからを予測する必要があります。
これまでは、ネットに”ある”ことが人を刺激し、そこから様々なリアクションが生まれてきました。
しかし今後は、ネットに”ない”ことが逆に人を刺激するようになっていくと思います。
ネットに”ない”からこそ新鮮で価値があり、お金や時間を使ってみたい……そう考え行動する人が増えると思います。
2021年現在は、まだまだネットに”ない”ことが多いので、それが”ある”に変わったときの興奮や感動が生まれます。
有名な洋食屋さんの秘伝のレシピ、何百年継承されてきた門外不出の古武道、プロスポーツ選手のテクニックやトレーニング、有名塾講師の授業……
それらを公開することにまだまだ価値が存在します。
しかし、それらが一通り出そろったときどうなるでしょう?
あって当たり前、誰でも知ってる、いつでも学べるというものに人は特別な感情を抱きません。
するとどうなるか?
今度はネットに”ない”ものを探すようになります。
自分しか知らない情報、リアルでしか体験できないことを探すようになるはずです。
これを見越して教室を運営していきます。
例えば、ギター教室を運営するにあたって、情報や活動をどんどんネット上に開示していくとします。
ブログ、SNS、YOUTUBEチャンネル、オンラインサロンなどなど。
2021年現在でも、まだぎりぎりそれらが”ある”ことに価値が出ると思います。
なぜかというと、ネットに”ない”方がまだ多いからです。
情報がないよりある方が安心できるし、時代に乗っている感じもします。
だから、教室の領域をネット上に広げていくことにまだ価値はあるし、その分反応は出ると思います。
では、あらゆる教室の情報がネットに存在し、レッスン内容、講師の人となり、教室環境などが全て把握でき、質問や相談もいつでもできてあたり前になったら?
情報が”ある”が当たり前になり、そこに価値がなくなります。
教室の情報がネットに”ある”ことの価値はやがてなくなる。
じゃあネットに教室の情報を開示しない、ネットで活動しないようにすれば教室の価値は上がるのかというと、そうではありません。
ネットから教室の情報を完全に排除してしまうと生徒さんから見つけてもらえなくなるし、はっきりいって不気味なだけです。
重要なのは、情報の配分です。
ネットに開示している情報と、教室でしか教えていない情報、教室じゃないとできないことをはっきりと分けるのです。
そうすることで、教室で習う(リモート含む)ことの価値を上げます。
YOUTUBEレッスンやオンラインサロンなどは、入会のわずらわしさ、対面の緊張感、不安感、そして月謝の負担などを極力減らしつつ実際のレッスンと遜色のないことが習えるので、画期的なシステムだと思います。
まだまだ珍しいということも相まって、2021年現在ではおおいに価値のあるシステムでしょう。
また、教室側としても、一人で多数を管理できたり、全世界に発信できるというメリットもあります。
数さえ集められたらもう教室を構えなくても完全オンラインにしてもやっていけるでしょう。
ではあらゆる教室のあらゆる情報がネットに開示されたら?
既に述べたように、ネットに情報が”ある”ことの価値が下がり、同時に競合ばかりが増え続けます。
横浜市神奈川区のある街のギター教室が、全国、もっと言えば全世界のギター教室と競合しなくてはならなくなります。
そこで、あえて教室の情報をセーブし、重要な情報は習いに来ないと獲得できないよ、質問や相談もネットではできないよとします。
するとどうなるか?
習いに来た人だけが得をすることになります。
ネット上にない情報を得て、ネットでは気軽にできない質問や相談をする、そこに特別な価値が生まれます。
ここで一つ重要なことがあります。
それは、教室のレッスン内容や相談への回答にそもそも価値があるかどうかです。
それらに十分な価値があるから、そこに生まれる付加価値の効果が発揮されます。
レッスン内容もありきたりで相談しても有意義な答えが返ってこないと、生徒さんは「わざわざ教室に来て損した」とがっかりしてしまいます。
人は価値のあるものを苦労して手に入れたとき、より強い喜びや充実感を感じます。
もちろん、価値のあるものを簡単に手に入れたときにも驚きや幸福感を感じますが、それが当たり前になると何も感じなくなるという話です。
ネットになんでもある時代に、ネットにない特別な情報を獲得する喜びを提供する、これが僕が考えるギター教室の価値です。
ここまで読んできた方は、当然「じゃあその戦略は成功しているのか?」と問いたくなるでしょう。
実は、2019年はバッチリ成功していました。
しかし、2020年にコロナが拡大し、夏頃までは何の影響もなかったんですが、夏以降世の中がガラっと変化し、教室もかなり苦しくなってきました。
さすがにコロナという異常事態の中で上記の戦略が有効かどうかというのは立証できません。
ぎりぎりのところで持ちこたえているということが今は成功の証なのかもしれませんが。
あと、この戦略はネットに”ある”が当たり前になった後に本領を発揮するなので、真価を発揮するのはもう少し先になります。
あらゆる情報が開示され、あらゆるアクティビティがネットで気軽に体験可能になった暁に、改めて「個人的な体験」に価値が生まれててきます。
近い将来そうなることを信じて、僕は情報をセーブし、教室に限定したレッスンを行っていきます。