八幡謙介ギター・音楽教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介が音楽やギターについてつづるブログ

ジャズのアドリブでソロを取るとき、テーマ終わりのディレクションをどう処理するか

前回の記事

前回、テーマ→ソロと進むときの意思の疎通について書きました。

未読の方はまずそちらをお読み下さい。

k-yahata.hatenablog.com

前回は、ソロセクションに対する伴奏者の意思決定を理解し、それを手助けするためのディレクションとして1小節早くソロをはじめようというところまでで終わりました。

では具体的にそのディレクションはどうすればいいのかを解説します。

伴奏へのディレクションとしてのソロ導入

今回もテーマの最後の小節一拍目からソロに入るとします(実際はテーマの2小節前からというのもよくありますが、どっちでもOK)。

本記事ではこれを「導入」と呼ぶこととします。

伴奏者はこの導入を聴いて、ソロセクションをどう演奏するかを決めます。

ということは、導入がグダグダで何をしてほしいか全く分からなければ、当然伴奏もグダグダになります。

これからソロを弾く人は、この導入をただ自由に弾くだけではなく、ちゃんと伴奏者に「ソロはこんな風に弾きたいから、よろしく!」とディレクションしないといけないのです。

では実際にどういったフレーズを弾くか……の前に、伴奏のパターンを再確認しましょう。

ソロセクションでの伴奏のパターン

ソロセクションで伴奏者ができることは無数にありますが、ソロプレイヤーが導入でディレクションできることはそう多くありません。

現実的には次の2つだけです。

 

2フィールでゆったりとソロに入ってほしい(ドラムはそれに合わせる)

ウォーキングでドライブ全開でソロに入ってほしい(ドラムはそれに合わせる)

 

細かいところ、例えばベースが2フィールのときドラムはスティックなのかブラシなのか、スネアを使うのかハイハットを叩くのか、といったことはディレクションできないし、するものでもありません。

ただ、2フィールかウォーキングかどっちのフィールでソロに入ってほしいのかはディレクションする必要があるし、リズム隊はそれを待っています。

ですからテーマからそのまま自分がソロに入る場合、2フィールかウォーキングかをしっかりフレーズで示さないといけないのです。

どうやってフレーズでディレクションするの?

問題はどうやってフレーズで2フィールかウォーキングかをディレクションするのか?

これもそんなに難しくありません。

 

2フィールでソロに入ってほしい

→間をたっぷり持たせたフレーズ

 

ウォーキングでドライブしてソロに入ってほしい

→間の詰まった勢いのあるフレーズ

 

これをきっちり行えばディレクションになります。

ただしここで気を付けたいのが、リズムセクションがはっきりと意思を理解できるレベルできっちり弾くということです。

自分はやってるつもりではだいたい伝わりません。

2フィールでディレクションするとき、誰が聴いてもこの人は2フィールで入って欲しがっているというフレーズを弾ききることが大事です。

じゃあそれってどんなフレーズかというと、それは曲にもよるし、当然アドリブなのでその人の志向によっても変わってきます。

また、フレーズ自体はいいけど弾きこなせていないからディレクションにならないという場合もあります。

だから実際のフレーズはここでは挙げません。 

しかし、過去の名演から学ぶことはできます。

Sonny Stitt/Stitt's Sits in with Oscar Peterson
Sonny Stitt Sits in With the Oscar Peterson Trio

Sonny Stitt Sits in With the Oscar Peterson Trio

 

こちらの1曲目「I Can't Give You Anything But Love」。

テーマでは、

 

ベース→ウォーキング

ドラム→ブラシで抑え気味に

 

という感じで伴奏しています。

テーマの最後2小節を残して伴奏がブレイクすると、スティットが早いフレーズでその間を埋めていきます。

これがディレクションとなり、ソロセクション頭からドラムがスティックに持ち替えてライドを叩きはじめます。

ベースもよく聴くとギアを一段階上げてドライブ感を増してソロセクションに入っていることが分かります。

ピアノはテーマもソロ頭もあんまり変わりません。

あえてなのか、悠長な性格なのか…

Hank Mobley/Soul Station
Soul Station

Soul Station

  • アーティスト:Mobley, Hank
  • 発売日: 1999/03/17
  • メディア: CD
 

こちらの1曲目「Remember」は2フィールからステイしてそのままソロに入るパターンです。

上記のスティットと同じくテーマの最後2小節でブレイクしていますが、モブレーはそれほど詰め込んだフレーズを吹いていません。

ウォーキングにもいけそうな感じはしますが、まだ落ち着いた印象のフレーズでソロの導入を吹いています。

だから伴奏も2フィールのままでソロに入っています。

この演奏は、ソロ2コーラス目で2フィールからウォーキングに入っているのですが、面白いのは、サックスよりもピアノがそのディレクションを出しているところです。

1コーラス目最後でサックスも「行くぞ」という空気感を出していますが、よく聞くとそのバックでピアノが「チャチャチャチャチャチャ」とコードを連打しています。

個人的にはこれが決定打となってベースが反応したように聞こえます。

ソロではなく伴奏のピアノがディレクションを行っている例です。

本作で弾いているウイントン・ケリーはわりとそういうことをやる人で、ウエスとやっている「Smokin' at Halfnote」でもそういったディレクションが聴き取れます。

 

ちなみに、ソロがあんまりはっきりとディレクションしていなくても伴奏がバシっと変化しているケースもあり、それは最初から打ち合わせしていたんでしょう。

また、ライブ音源などでは、ソロに切り替わって数小節はベースとドラムが合っていなくて、だんだんグルーヴしてくるといったものもあります。

誰がそれをディレクションしているのかを聴こう
ご存じの通り、ジャズは場面場面で演奏の形式がガラッと、あるいは微妙に変化します。
一般的な理解としては、個人個人が自由意志でそういった演奏の変化を付けているとされていますが、実はその裏でディレクションを出しているプレイヤーがいることが多々あります。
ドラムの変化は、ドラマーの意思ではなく、ソロプレイヤーのディレクションを受け取った結果、というようなことがよくあります。
そういったディレクションを聴き取るのもジャズの楽しみ方のひとつです。
まあ、ちょっと難しいですが、分かってくると各プレイヤーの意思まで伝わってきてとても面白いです。
こういうのをちょっとずつ発見していくことがジャズを聴くということだと僕は思います。
この辺の話はきりがないので、もっと具体的に知りたい人がいればレッスンにお越し下さい。

サウンドハウス

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