前回、イメージが大事だという話をしました。
では、ある程度楽曲に対してイメージが持てたら、そこからイメージとパーツのマッチングをしてみましょう。
パーツとは、自分が持っているフレーズ、コード、サウンド、奏法などです。
それらを、職人が道具を選ぶように一つ一つ吟味してみましょう。
悲しい感じの曲ならマイナーコードが合うというのは誰でも分かると思います。
ざっくり言えばこれがマッチングです。
それ以外にも、
- 激しいイメージ→ディストーション
- 渋いイメージ→ブルーノート
- お洒落なイメージ→テンションの入ったコード
- スピード感→速弾き
などなど、これぐらいならちょっと音楽をかじっていれば誰でも分かると思います。
ここからさらにイメージを細分化させ、それに合ったパーツをふるいにかけていきます。
ある楽曲が持つ「悲しい」というイメージを、どう悲しいのか、なんで悲しいのか、悲しんでいるのは誰なのか…といった風に細分化していきます。
- 結婚を約束していたフィアンセが交通事故で亡くなった男の悲しみ
- 思春期の女の子が夜ふと襲われる漠然とした悲しみ
- 戦争に巻き込まれて祖国を追われた民族の悲しみ
- 推しのアイドルが卒業するときのファンの悲しみ
全部違う「悲しみ」ですよね。
ということは、それぞれ使うフレーズ、コード、サウンドなどが違ってくるはずです。
これを全部同じサウンドで、A-のトライアドで表現できると思う人は、イメージもパーツの選定も甘いです。
細分化されたイメージと、それに合ったパーツのマッチング度が高ければ高いほど、そこからイメージをつかみ取りやすくなります。
人はそういった音楽、芸術に酔いしれます。
どんなに磨き抜かれた極上のパーツでも、イメージがなければただの記号です。
それに喜ぶのは同業者だけです。
ではどうやってイメージを細分化し、それに合ったパーツを見つけるのか。
なにが正解でなにが不正解なのか。
それを訓練する方法はありません。
よくいいものに触れること、本物を知ることが大事だと言われますが、自分が本物を理解できるレベルに達していないと「ふーん、これがかの有名な○○か」と感心し、写メや動画を記念に撮って終わりです。
では本物を理解できる自分になるためにはどうすればいいかというと、これも訓練方法はありません。
強いて言えば、続けることです。
同じことを続けていれば、年齢と共にいろんな角度で見ることができるようになります。
そうすると、だんだんイメージが深化していきます。