何かの関連でこの動画が出てきて、おもしろさに釘付けになりました。
僕はジャズをあえて「難しい」と捉え、その難しさをちゃんと理解するというところを出発点としています。
この動画もプロのやってる「難しい」プレイを変に噛み砕かず、難しいことをそのままちゃんと伝えているところが素晴らしいと思います。
僕はずっと教室でジャズを教えるとき、ドラムが大事、ドラムを聴け、ドラムの仕事を理解しよう!と言ってきました。
なぜなら、ジャズはドラムが指揮者であり監督だからです。
自分の意思や意図がちゃんとドラムに伝わっているかどうかで演奏の出来は全く違ってきます。
また、ドラムが他の演奏者の微かな意思や意図をくみ取れるかどうかでも違ってきます。
- 演奏者→ドラム
- ドラム⇔全体
この相互作用がなければジャズは成立しません。
そういったことをある程度言語で理解できるのが上記の動画です。
現時点でこういった動画は少ないみたいなので(もしかしたらこの方だけかも)ジャズを学ぶ資料としてはかなり貴重なものと言えるでしょう。
ちなみに、上記の動画でドラムがやってることは7割ぐらい知ってましたが、3割は全く知らなくて「そこまでやってたんだ!」と新鮮な驚きがありました。
20年以上ジャズやっててもまだこんな驚きがあるのが嬉しいです。
ただ、こうした説明シリーズは学習者を甘えさせる懸念もあります。
音楽なので、理想を言えば音だけを聴いて「ピアノがこう来たからドラムはこう反応したんだろう…」と推察できるようになるのが理想です。
もちろん入り口として説明してもらうのは全然ありですが、いつまでも、何に対しても説明を求めるのは違います。
仮に好きな作品があったら、何年かかってもそれを自分の力だけで理解するというのを宿題にしてみるのもいいと思います。
僕もモンクを理解するのに20年ぐらいかかりましたが、それぐらい時間をかけることで自分とアーティストが見えない糸で結ばれるような感覚が生まれます。
その感覚はお金や名誉などには代えがたいもっと大事な何かを自分の中に宿してくれます。
芸術と説明は長らく水と油のように反発していました。
ましてや、作者やパフォーマー自らが自分の作品/パフォーマンスを説明するなんて野暮の骨頂、「お前の作品は説明しないと理解してもらえないのかよw」と、物笑いの種でした。
アーティストも、理解されたい、でも説明はしたくないというジレンマに苦しんできました。
しかし、ネットが普及し、芸術の裾野や意義、価値観が広がった昨今、説明もまた自分の作品/パフォーマンスを補強する芸術活動であると認識が変わってきた感があります。
上記の動画以外にも、有名アーティストが自身の作品や過去の出来事を改めて説明し、ファンはそれを観て再度認識を新たにするといったものも多数あります。
まったく偶然ですが、僕自身も自分の小説を説明するシリーズを書いているところですし。
こうした「説明」が今の機運、空気感なのかもしれません。
お高くとまって「作品が全て」「言いたいことは作品に全て込めた」などと言っていると、時代に取り残されるかもしれませんね…
まあそんなことはともかく、この動画でジャズへの理解が確実に深まるのでこれからジャズをやっていきたい人、ある程度やっている人、プロの人も必見です。