八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

佐野仁美の歌がめっちゃいいのでご紹介します


八幡謙介ギター教室in横浜

先日、レッスンのためにとある曲をYOUTUBEで調べていたら、「お!」と思える歌手がいたので、とりあえず登録しておき、後で聞いてみることにしました。

佐野仁美さんという方で、最初はYoutuberの方かなと思ったらプロの歌手でした。

サイトはこちら。

sanohitomi.com

関西で活動されている方のようです。

細かいことはさておき、彼女の歌の何が凄いのかを以下解説します。

1、歌詞の理解が深い 

僕がヴォーカルレッスンで唯一教えていることが、歌詞を理解するということです。

歌詞をしっかりと読み込み、咀嚼して自分のものにすることで歌が伝わるようになる、というのが持論です。

佐野さんはそこが徹底しているのではないかと思えます。

というのは、佐野さんの歌を聴いていると、情景がとてもクリアに見えてきます。

風景や、感情、動きなどが目に見えるので聴いていて厭きません。

特に驚いたのは、季節の表現です。

2-1、歌から季節が見える 

J-POPには季節の歌がたくさんありますが、ほとんどは歌詞のワードとアレンジ、そしてPVの演出で季節感を出そうとします。 が、佐野さんは歌で季節を変えられます。 夏の歌は夏に聞こえ、冬の歌は冬に聞こえます。 さらに凄いのが、「夏の終わり」は本当に夏に聞こえ、「冬がはじまるよ」は本当に冬が始まるように聞こえます。

youtu.be

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単なる「夏」とか「冬」だけではなく「夏の終わり」「冬がはじまる」とさらに限定した季節感を表現できるというところが凄いです。

他にこんなことができる歌手を僕は知りません。

 

 

2-2曲の中で季節を分けて表現

さらに凄いのがコブクロの「桜」です。

この曲はAメロが冬、サビで春となるのですが、それもちゃんと歌い分けています。

youtu.be

そもそもこの曲は『人間の成長を桜になぞらえる』という主題なので、オリジナルでは季節の変化はそこまで重要視されていない印象です。

佐野さんは独自の解釈で歌っているので、自分の歌になっています。

そこらへんも好印象です。

てか、若いのによくそこまでできるな… 

3、楽曲に素直

カヴァーを中心に1時間以上ずーっと聴いていると、とにかく楽曲に素直という印象を受けました。

何かに似てるなーと思ったら、ギターのタチアナ・リツコヴァと一緒ですね。

k-yahata.hatenablog.com

変に楽曲を征服しようとか、道具にしようとしていないので、それぞれの曲の世界観がすーっと入ってきます。

僕はそういうミュージシャンが好きなんでしょう。

佐野さんは、素直すぎて楽曲ごとに歌い方が変わってしまっているのも面白いですね。

変な話、プライベートが心配になるレベルです(彼氏に染まってしまうタイプかも?)。

4、技術を鎧にしていない

これもタチアナと同じですが、佐野さんはかなり高い歌唱技術を持っていますが、それが鎧になっていません。

「技術が鎧になる」とは、上手さが言い訳になったり、保身につながるような歌です。

自分は研鑽を積んでいるから、ヴォイトレ一生懸命やったし、これだけ上手ければプロとして合格でしょ? もっと下手な人いっぱいいるし、じゃああなたは自分より上手く歌えるの??

そんな心の声が聞こえてくる歌はいくらでもあります。

そういう歌を聴くと無意識に心が冷たくなり、閉ざされていくのがよくわかります。

佐野さんの歌やタチアナのギターはそういった印象が全くないのですーっと入ってきます。 

5、演技がない 

歌で一番気持ち悪いのが、演技です。

「今歌の世界に入ってますよ~」という演技、「今私には歌の景色が見えてますよ」という演技。

これほど気色悪いものはありません。

佐野さんはそういう演技を全くしないので安心して聴いていられます。

一瞬身振り手振りなどがあることもありますが、演技というよりは本当にそういう気持ちだからそういう動作になったように見えます。

その分派手さがないので物足りなく、「何これ、普通じゃん」と感じる人もいるかもしれませんが、その普通がどれだけ難しいか…

例えば「もののけ姫」なんて世界観が強いので、うっかり演技ソングの代表みたいなもんだと思いますが、演技なしでしかもこの曲の世界観をちゃんと歌っています。

youtu.be

 

 

6、歌がSEOに勝っている

YOUTUBEのいわゆる「歌ってみた」動画のほとんどは、歌がSEOに負けています。

どういうことかというと、例えば「桜」という歌を歌っていたら、歌そのものよりも『わて、この曲でPV稼ぎたいでおます』という表現の方が前に出てしまう、それがSEOに負けるということです。

その分こっちはちょっと興ざめしてしまいます。

アーティストの新曲をリリース日にカヴァーして動画で出されているのを観ると、歌云々よりも『必死だなー…』と感じるあれです。

しかし、佐野さんのカヴァーはどれを聴いてもそういう下心が見えてこないのですっきりと観ていられます。

実際は相当SEOに苦心していると思うんですが(タイトルの付け方とか)。 

歌の奥にあるものが聴き取れるか

このブログでも時々書いていますが、音楽には技術の奥に何かがあります。

それが一番顕著に出るのが歌です。

歌詞を記号程度にしか捉えていないのか、本当にその世界が見えて、感じているのか。

音程が正確で声量があるのがいい歌だと思っているのか、それともそれは道具で、それ以上に伝えたいことがあるから歌っているのか。

注意して聴けばそんなことが分かるようになってきます。

まだ分からない人は佐野仁美の歌が「いい歌」だととりあえず思って、他と何が違うのかを比べてみるといいでしょう。

もちろん、一番大事なことは他人の基準を土台にして最終的に自分の基準を造ることですが。

佐野仁美が売れるかどうかは知らんし興味ない

この記事を読んで、「じゃあ佐野仁美さんは今後売れますか?」と訊きたい人もいるでしょうが、 個人的にはそんなこと知らんし興味もないです。

今、現時点でいい歌をたくさん歌っているので紹介したくなっただけです。

この先もっとよくなるかもしれんし、悪くなったらもう聴かないです。

 

追記

k-yahata.hatenablog.com