八幡謙介ギター教室in横浜講師のブログ

ギター講師八幡謙介がギターや音楽について綴るブログ。

歌が上手くなりたいなら歌詞を読み込むべし


八幡謙介ギター教室in横浜

横浜ギター教室では歌のレッスンも行っています。

といってもヴォイトレのようなものではなく、歌がいいかどうか、聴けるかどうかをリスナー視点で僕が聴き、改善点を模索するというものです。

ですから上手くなるというよりは、聴ける歌になるかどうかがポイントです。

 

生徒さんの歌からは、だいたいいつも違和感を感じます。

なんでこの歌を歌ってるの?

この歌本当に好きなの?

何の歌か分かってるのかな?

僕に何を表現してるんだろう??

などなど。

それを直接伝え、その後ディスカッションしていくことで歌に違和感を感じる原因を探ります。

最近では歌が伝わらない理由がだいたい分かってきました。

それは、歌詞の理解度が著しく低いからです。

 

「歌詞を読み込む」という言葉は一度は聞いたことがあると思いますが、では実際どういうことか? というと、明確に答えられる人はあまりいないと思います。

どちらかというと文学的な技術になるので。

具体的には、歌詞の主人公はどういう人で、いくつぐらいで、どういう容姿で、何を思っているのか。

あるシーンがあれば、それがどんな情景なのか。

ある単語に対してどんなイメージが湧くか。

その歌詞の主題は何か。

どんな世界観で、何が表現されているのか。

それを徹底的に掘り下げていきます。

このとき、多くの人は読み込むのがめんどくさいので、歌詞の表面にひっついている誰でもわかるイメージをぱっと掴んで「これ!」と答えにします。

例えば「なごり雪」を「雪の歌」と言うようなもんです。

もちろん雪を題材にした歌ではありますが、それだけではあまりにも表面的すぎます。

じゃあ「なごり雪」って何を表現しているのか、どんなストーリーがあるのか…そのへんを深く掘り下げていきます。

実際の例はこちら。

k-yahata.hatenablog.com

では歌詞を読み込むとどうなるのか?

 

 

最初普通に歌ってもらったとき、上記のように「何を歌ってるのかわからない」「途中で厭きる」「なんでこの歌が歌いたいの?」と歌を聴きながら疑問がどんどん湧いてきたのですが、歌詞を読み込んだ後に歌ってもらうと、最後まで心に余計な思考が浮かばずにすんなりと聴けました。

それだけかい! と思うかもしれませんが、これは相当な違いです。

途中で厭きられたら終わりです。

YOUTUBEだったらその時点で次の動画に行ってます。  

どんなに声量があっても、ピッチが正確でも、さらには容姿が良くても、途中で厭きる歌を歌う人はいくらでもいます。

歌詞をしっかり読み込んでそれを自分のものにするだけで、とりあえずそこをクリアすることができるのです。

もちろんジャッジしているのは僕一人なので、また違う人に聞かせたら違う反応が出るかもしれませんが。 

 

ではなぜ歌詞を読み込むだけで、特にヴォイトレもせずに歌が変わるのでしょうか?

人は言葉から様々なイメージを受け取ります。

例えば「ふーん、そうなんだ」という言葉があります。

誰がいつこの言葉を発しても同じ印象かというと、そうではないはずです。

「ふーん、そうなんだ」の中に、たっぷりと侮蔑や嘲笑を感じることもあれば、尊敬や応援を感じることもあります。

中には全く意味のない相づちである場合もあります。

そうやって人は言葉から中身をくみ取って何かを感じ、共感したり喧嘩をしたりします。

歌手が歌う歌詞にも同じことが言えます。

例えば『東京で見る雪はこれが最後ねと』という歌詞(なごり雪)を、何も理解せずに歌っていたら、リスナーにも何も伝わりません。

正確に言えば「中身が何もない」ということが伝わります。

だから聞いていて厭きてくるのでしょう。

しかし、なぜその台詞をそのタイミングで言ったのか、どういう意味なのか、どういう感情なのかを理解して歌うことで、単なる言葉にイメージが付随されます。

リスナーはそのイメージをくみ取り、歌に心を掴まれるのです。

 

僕は、歌の善し悪しは技術ではなく、歌手のもつイメージ力にあると思います。

実際、同じくらい上手な人が同じ歌を歌っても歴然と違っていることは多々あります。

また、技術では勝っているけどどうしてもオリジナルには勝てないというケースもあります。

そのイメージを膨らませ、人に伝えるためには、歌詞を読み込むしかありません。

ただ、それはそれで文学的な技術でもあるので、訓練していかないと身につきません。