僕は何かをするときに、まず最悪の状況を想定します。
もちろんいいことも考えますが、やる気があって仲間がいてお金も人も集まって、その上社会がちゃんと回っているときはまあ何しても上手くいくでしょう。
だからいいときのことはあんまり考えません。
大事なのはそうでないときです。
やる気が出ない、仲間も去っていった、資金もない、その上社会が不安定……、それでもぎりぎり生き延びるためにはどうすればいいか?
横浜でギター教室を開講したときはリーマンショックから数年、東日本大震災から半年ちょっとだったので、確かそういったことを考えていた記憶があります。
最悪の状況でもぎりぎり生き延びるというとなんだか大げさに聞こえますが、要はリスクヘッジをしっかり取るということです。
単純に、
・大手に頼らない
・ひとつのことに依存しない
・事業を拡大しすぎない
・できるだけ一人で出来ることを仕事にする
こんな感じでやってきました。
具体的に説明しましょう。
例えば大手の教室に所属すると色々とメリットがあります。
しかし、それもその教室(または親会社)が安定していればの話です。
なにかの影響で教室(親会社)が破綻したときに、雇われの講師なんて真っ先に切られるでしょう。
そうするとまた一からのスタートになります。
「元○○教室講師」なんて肩書きは役に立ちません。
「大手は大丈夫っしょ?」と思ってる人はリーマンショックやバブルについて勉強しましょう。
何かに依存していると、その何かが破綻したり、そこから切られるとアウトになります。
一番分かりやすいのがユーチューバーでしょう。
ユーチューブに依存していると、バンされたり広告を外されればそこで一発アウトになります。
多くのユーチューバーさんはそんなこと分かってて副業もちゃんとしているんでしょうが。
仮に何かに依存していたとしても、リアルとネットに分散するという方法もあります。
僕の場合は教室に依存しているといえばそうですが、スカイプと教室で分散しています。
今回のような行動制限がかかってもネットレッスンなら無傷だし、リアルの生徒さんを一時的にネットレッスンに避難させることも可能です。
ちなみに、その移行をスムーズにさせるためにスカイプレッスンと教室レッスンを同額にしています。
それなら極端な話「今日から全員スカイプレッスンね」と言っても料金面でトラブルは起こりません(もちろんそんな急なことはしませんが)。
また、急な転勤で教室に来られなくなった人もスカイプレッスンにすれば継続できます。
例えば僕があちこちに教室を構えて飛び回っていたら、今回のコロナショックで相当ダメージを受けたでしょう。
また、人を集めてワークショップを開催し、それで収入を得ていたとしてもアウトです。
地味にひとつの教室だけでレッスンをし、露出は少ないけどその分教室に来ている生徒さんにはきちんと対応しますよという形で続けてきたおかげで、今回のコロナショックでもダメージを受けずに済みそうです。
もちろん、平時にもっとあちこち飛び回って事業や活動を拡大していれば収入は増えますが、その分有事のときにダメージを受けます。
「その分はまた社会が回復してから稼ぎゃいい!」という人はそうすればいいでしょう。
僕はそっちのタイプではありません。
仲間がいたり、人を抱えて仕事をする、あるいは大口の取引を行ったりするのはやりがいがありますが、やはり何かあったときにめんどくさい思いをします。
一人で出来る仕事は一見不安定なようでいて、実は意外と安定しています(まあ、安定を求めているわけではないのですが)。
特に、ギターレッスンには取引が一切ないので、どこかの会社が潰れたり、今回のように取引先の都市機能が麻痺したらこちらも共倒れということは基本ありません。
その辺はリーマンショックのときになんとなく分かっていましたが、今回のコロナショックで改めて確信しました。
もちろん別の不安要素はたくさんありますが。
そういえば音楽活動をやめたときも、ライブ活動よりもこっちの方が安全だと考えていたような気がします。
別に今回のような騒動を予見していたわけではありませんが、最悪なことは絶対に起こると常に考えているので。
人は何かをはじめるとき、必ずいいことばかりを考えます。
確かに、それがモチベーションとなって頑張れるというのは否定しません。
しかし、良いことがあれば必ず悪いこともあります。
そして、圧倒的にきついのが悪いことが起こったときです。
良いときなんて何しても上手くいくので、良いときのことを想定し、準備する必要なんてありません。
「悪いときのことばかり考えると怖くなって動けなくなる」と言う人もいますが、逆じゃないですか?
悪いときのことをしっかり考え、最悪のことがあってもたぶんぎりぎり死なない程度にやっていけると確信できればむしろ動きやすくなります。
また、最悪の事態を想定して動いていれば、ほんのちょっとのことでも幸せに感じられます。
「リスクを恐れない」というのは、リスクを考えないことではないでしょう。
こうした考え方をどこで学んだのかというと、たぶん「るろうに剣心」です。
「拙者の手の届く範囲で云々」という哲学は、世界を救うヒーロー全盛だった当時、中学生の僕には衝撃的でした。
和月先生、また漫画描いて欲しいな……