物事にはいろんな学び方があります。
大きく分けると、言われたことだけをやる人と、自主的に方法論を立ててくる人がいます。
教える側からすると、前者が正しく、後者は間違った習い方です。
と言うと「俺の言ったことだけやってりゃいいんだよ!」といかにも傲慢な態度ように思えますが、そうではありません。
以下、講師目線での考え方を説明しますが、ここでいう「講師」とは十分な経験を積んだ者に限ります。
ざっくり言うと講師歴10年以上です。
例えば、なにかを習得していくとき、講師がAという方法を採用するとします。
なぜAという方法を採用したのかというと、自分がやってるからでもなく、もちろんそれ以外知らないのでもなく、BもCもDもEも、およそ考えられる方法は全て過去に試してみたけど最終的にAが一番いいと結論が出たからAを採用したのです。
しかし、Aをやるにあたっていちいち「Bという方法もあってこういうやり方なんだけど、これをやるとこういう問題があるからやらない」「Cはこういうアプローチになるが、そうするとこういう問題が起こる、だからやらない」……などと説明していては時間がいくらあっても足りません。
だからBやCやDやEについては基本言及せず、Aだけを説明し、教えているのです。
Aの背景にはそうした歴史があるということです。
ちゃんとした講師なら、およそあらゆることに対してトライアンドエラーの歴史を踏まえて最終的にあるひとつの方法を採用しているはずです。
また、講師がいちいちBやCやDなどの失敗の歴史を説明しないのは、生徒を信用しているからです。
Aが一番と自信を持って教えているので、その通りやってくれるだろうと。
しかし、中にはBやCをやってくる人もいます。
そうすると、改めてそれらをなぜやらないのかを説明しないといけなくなります。
もちろんそのときはなぜBがダメなのか、Bと比べてAのどこがいいのかをちゃんと説明しますが、普通にAをやってきてもらえればその時間は必要なくなります。
また、Aを教えてBをやってき、改めてAを教えたら今度はCをやってき……と、何度言っても別のやり方をやってくる人もいます。
結局のところ、Aを教わったらそれをやってくるのが一番楽で手っ取り早いということです。
なぜなら既にやるべきでないことが削られているからです。
中にはそれでいくと5年ぐらいはいい感じに進むけどそこから停滞して先に進めなくなるといった方法論もあります。
もちろんそれも除外しています。
講師はそれぐらい先のことを見越して教えています。
最後に、講師から教わったAという方法に疑問があれば、Bをやる前にまず質問しましょう。
どういった答えが返ってくるかは内容次第ですが、少なくとも講師がその方法を知らないということはまずありません。
知っていて採用しないということは概ね何らかの問題があるからでしょう。
Aを練習していてBを発見したとき、新しい方法論を自分は発見した! とか、先生はこれを知らないんじゃないか? こっちの方がきっと合理的だ! などとはゆめゆめ思わないようにしましょう。
ちゃんとした講師ならもう何十年も前にそれを徹底的にやった上で否定し、もっと合理的で実践的なものを発見し、習得し、レッスンでいろんな人に試した上で改良し、完成したものを既に教えています。