最近横浜ギター教室で歌を教えることが少しずつ増えてきました。
といっても、発声とか歌唱技術については一切触れません。
僕自身できないし、そんなことは専門の先生に習えばいいので。
じゃあ何を教えるかというと、まずは印象です。
先入観をできるだけ消して、まっさらな気持ちで生徒さんの歌を聴いたときに「ん?」と違和感を感じるのか、「お」と引き込まれるのか……
それを言語化していき、歌っている生徒さんの気持ちや考え方とすりあわせていきます。
そうすると、主観と客観のズレを発見できます。
例えば、生徒さんが好きな曲を歌ったとします。
しかし、聴いているとこちらは何か違和感を感じます。
「好き」が伝わって来ない、なんか無理してる感じがする、などなど。
そこで、そういった印象を伝えると、何らかのリアクションが返ってきます。
極端な例だと、「実はこの曲はそんなに好きじゃないんです」というケースもありました。
ではと、本当に好きな曲を歌ってもらうと、急にキラキラしはじめたということもあります。
逆に、本当に好きな曲を歌っていても、どこか自己満足でカラオケ的に見える場合もあります。
別に下手ではないし、好きなんだろうなというのも分かるんですが、わざわざ聴く必要があるとは思えない歌。
なぜかは分かりませんが、「好き」だけではリスナーに届かせられない人もいます。
そういう人にこちらの印象(マイナスな)を伝えると必ず「でも自分はこの曲が好きなんです」と返ってきます。
それはそうなんでしょう。
問題は、自分の「好き」をリスナーが共有できないということです。
「好き」のエネルギーだけで人を魅了できる歌手もいれば、それとは違うところで真価を発揮する歌手もいます。
どっちが正しいとかではなく、自分に合った方法論で歌えばいいだけです。
「好き」では届かないのに、それでも「好き」のエネルギーに頼るから変なことになっていくのです。
いずれにせよ、大事なことはリスナーがどう感じるかです。
「私はこの曲が好き」をリスナーが楽しんでくれれば、それはある種の才能です。
「私はこの曲そんなに好きじゃない」と感じていても、リスナーが楽しんでいればラッキー。
「私はこの曲が好き」がリスナーに伝わらなければ、残念ながらその方法論では頭打ちとなります。
それを自分で判断することは至難の業でしょう。
自分が好きかどうか、自分に合っているかどうかと自分で判断しても、人から見れば全然違っていることがほとんどです。
だから、こちらからできるだけ客観的な印象を伝える、それが僕の歌のレッスンです。
そうして客観的意見を取り入れることで、新たな可能性が見えてきます。
例えば、ファンキーな楽曲が好きでそういった曲ばかり歌っていたけど、どうも自分にはおちついたポップスがあっているみたいだとか……。
それでも自分を貫くのか、あるいはアドバイス通りに一度志向を変えてみるのか、そこは自由ですが。