僕は菅野よう子氏の音楽も含めて攻殻機動隊のファンなのですが、菅野氏にはパクリ(盗作)疑惑があるということをずっと知っていました。
個人的に盗作だろうが何だろうがそれがいい音楽ならどうでもいいし、菅野氏の音楽は好きなので一切調べたことはありませんでした。
先日長年の宿題だった攻殻機動隊の解説を終え、
あーそういえば菅野さんについて変な疑惑があったなー、一度パクリとして比較されている曲を聞いてみるか……と、以下のまとめサイト(?)で確認しました。
そして全部ではないですが一通り聞いたあと、あーこれはたぶんこういうことだと思うけど一般の人にはわからんだろうし、そもそも作曲家やミュージシャンは分かっててもこの件自体に触れられないだろうし、僕が書いておく価値あるかなと思ったので書くことにしました。 とはいえ、全て推測ですのでその点はご了承ください。
まずこの件は次の二点を前提とします。
・菅野よう子氏は音楽を聴いた瞬間全ての素材を忠実に抽出・再現できる耳と感性を持っている。
・菅野氏は、その能力の高さを自覚していない
例えば料理人がある料理を一口二口食べただけでその料理の素材、調味料、隠し味、調理の順番、火加減などを全て言い当て、そっくり再現できるといった能力と同じものを菅野氏が持っているということです。
音楽をやらない人はわかり辛いかもしれませんが、実はこれ、作曲家やアレンジャーならわりと普通の能力だったりします。
プロの作曲家やアレンジャーなら全員これぐらいのことはできます。
具体的に言うと、ある楽曲を聴いて、全ての楽器の演奏内容はもちろん、シンセはあの機材に入っている音にこういう処理をしているなとか、ギターは○○タイプの形で△△社のアンプを使っているとか、ヴォーカルには□□社のマイクにこれぐらいのリヴァーブをかけているだろうとか……。
さらに全体のグルーヴのバランスも、ベースをこうしてドラムをこうすればこの曲の雰囲気が再現できる、とか……。
そして、おそらく菅野氏はその辺のことが他の作曲家よりも分かりすぎる人なんだと思います。
例えば普通の作曲家がある楽曲を60%再現できるところを、菅野氏は95%ぐらい再現できるのではないでしょうか?
例えばイラストでも、異常に再現が上手い人っていますよね?
悟空を描けばまるで鳥山明、ジョジョを描けばまるで荒木飛呂彦といった人。そういう能力は音楽にもあります。
菅野氏は幸か不幸かそういう能力が異常に高いんだと僕は推察します。
職業作曲家であれば普段から古今東西の膨大な音楽を聞いているはずです。
そこに菅野氏の抽出・再現能力があいまって、氏の脳内には純度の高い膨大な音楽素材のアーカイブが形成されていったのでしょう。
さて、そこにある楽曲の発注が来ました。
「ふむふむ、ではメロディはこんな感じで、ビートはこうで、ミックスはこうしてみよう」と、菅野氏は自分の頭の中からパーツを組み立てて楽曲を作成していきます。
しかし、菅野氏の「自分の頭の中にある」楽曲のパーツは、他の人よりもかなり純度が高いもの=今まで聞いてきた楽曲のパーツにかなり近いものです。
ただ本人はその純度の高さに気づいていません。
だからそうした純度の高いパーツ(規正の楽曲そっくりのリズム、メロディ)を何の迷いもなく出してしまい、その結果どこかで聞いた既存の楽曲に似てしまうという現象が起こるのでしょう。
こういう人は普通、抽出・再現能力が異常に高いせいで、何をつくっても既存のものに酷似してしまい、結局芽が出ないまま終わってしまいます。
しかし、菅野氏は才能があるので、それらを最終的にオリジナルにきっちり仕上げることができたのです。
そうして今日に至り、その抽出・再現性の高さが悪い意味でクローズアップされてしまったというのが僕の見解です。
ちなみに、個人的には上記まとめサイトの比較を聞いても「あっ!」と思った楽曲は一曲もありませんでした。
ほとんどの曲は似てるとすら思わなかったし、「あー、確かに」というのもあったけど、それはそもそものオリジナル楽曲がパターン化されたどこにでもありそうなものだったり。
そこで、どこかで聞いたときにその楽曲のパーツを脳内に抽出し、アーカイブしてあったのを無意識に再現したと考えると自分なりにすっきりしました。
まあこれが真相かどうはを確かめることは不可能ですが、ミュージシャン側からのひとつの見解として読んでもらえたら幸いです(擁護と取られるのかもしれませんが…)。
余談ですが、ドリカムの「Love Love Love」のオリジナルとされるAlbert Hammondの「For the Peace Of All Mankaind」を聞いたときはさすがに「あっ!……」となりました。
菅野よう子/Yoko Kanno Official (@YokoKannoCH) / Twitter