アドリブの習得法として、数で攻めるという方法があります。
例えばフレーズを100個も200個も覚え、それらを次々に投入する。
あるいは多彩なアプローチを覚え、次々に変化していくという方法。
いずれにせよ、これらは数の論理です。
より多くの何かを覚え、物量で圧倒するという考え方です。
この方法でアドリブをはじめると、まず最初にかなりの脱落者が出ます。
今回はその脱落者ではなく、そこで踏ん張って上に行けた人の話。
さて、数の論理に耐え、アドリブができるようになってきたとしましょう。
フレーズをほぼ無尽蔵に使え、多彩なアプローチを覚えていつでも切り替えられるようになったとします。
その先に待っているのは虚無です。
「自分は何をやっているんだろう?」
「なんかいつも同じことやってないか?」
「全体として聞いたとき何がいいたいのかわからない」
「まるで流れ作業をやっているみたいだ…」
これは僕が感じていたことでもあるし、アドリブがそこそこ~かなりできる方が僕のところに相談に来られる内容でもあります。
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アドリブを数で攻めると、必ずどこかで虚無的になり、行き詰まります。
そうならない幸せな人もたまにいますが……。
では、なぜそうなるのでしょうか?
それは、ひとつひとつのフレーズやアプローチが数によって希釈されているからです。
そもそも、数の論理でアドリブを習得しようとしている時点で、ひとつひとつのフレーズやアプローチは希薄になります。
あれもこれも覚えないといけないから、当然といえば当然でしょう。
そうしてうっすらと覚えたものを次から次へとどんどん投入していくと、中身のないものになることは明白です。
ではどうして最初にそこに気がつけないのかというと、アドリブを習得するよりも、アドリブの善し悪しを判断する芸術的な認識を獲得する方が遅いからです。
ざっくり言うと、アドリブはまあ3年も頑張ればそれなりに出来るようになりますが、それがいいか悪いかをしっかりと判断できるようになるまで5年かかるといったことです(この3年とか5年とかは例えです)。
だから自分のアドリブに中身がないことに遅れて気づくのです。
仮に早い段階で誰かから指摘されたとしても、自分がまだそれを理解できるレベルに達していないのでスルーしてしまいます。
そうして気がついたときにはもう自分のスタイルとして固まってしまい、矯正が難しいという状態になっていることが多々あります。
そういった人は本当に沢山見てきたので手に取るようにわかります。
ではせっかくアドリブが出来るようになったのに虚無的にならないためにはどうすればいいかというと、数の論理をまず捨てることです。
そもそもアドリブするのにフレーズもアプローチも山のようには要りません。
ブルースならペンタのフレーズ1個で普通に2~3コーラス弾けますし(ジャズブルースです)、スタンダードもコードトーンを覚えれば2、3個のフレーズで1コーラス十分弾けます。
しかも、そうやって厳選したフレーズを使っていくと、それらが鍛えられ、自分のものになっていきます。
そうやって少ないフレーズやアプローチをちょっとずつ自分のものにしていくと、数の論理の先にある虚無は回避することができます。
また、数の論理そのものを採用することがないので、そこで挫折することもなくなります。
こうしたことはレッスンで教えているので、興味がある方は一度体験してみてください。
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