年齢に限らず、他人の歴史を尊敬できない人がいます。
例えば僕に対して気軽に「なんでライブやんないんすか?」と訊いてくる人がそれです。
長年音楽をやってきて、海外も含めあちこちで演奏してきて、そして現在ストップしているという事実には必ず歴史があります。
その歴史を踏まえての今やらないという選択なのですが、そうした歴史を尊敬できない人が上記のような質問をしてきます。
こうした人は単にアホなんだと思って適当にスルーしてきましたが、よく考えてみればアホというよりも自分に対する敬意がまずないのでしょう。
例えば、学生時代に部活をしていたとします。
3年あるいは6年、小学校からなら10年なにかをやってきたという人もそれなりにいるでしょう。
そうして、例えば大学入学と同時にそのスポーツをやめたとします。
それが仮に高校の3年間だけで、しかもレギュラーも取れず大会でも成績を残せなかったとしましょう。
それでもその3年間で経験した出来事は、いいことも悪いことも、楽しいときも辛いときも自分の中の歴史としてしっかりと根を張っているはずです。
さて、それに対して昨日今日出会った人から「なんでやめちゃったの?」「続けたらいいじゃん?」と気軽に言われたらどう思うでしょう?
表面的にはどうあれ、内心はお前に何が分かるんだ? と思いますよね。
つまりそれが、自分の歴史に敬意を払われていないという状態です。
あるいは、自らその3年を自嘲し、肯定も否定もせずただ過去の出来事としてスルーしているとすれば、それは自分の歴史に対して自分が敬意を持っていないということです。
たった3年でも何かを続けるということはなかなかできることではありません。
部活をやっていなければ、学校に入ってちゃんと卒業したということでも構いません。
もっと言えば、15年、20年、30年生きているということもそれ自体が歴史です。
そこにちゃんと自分が敬意を持つことで、他人の歴史を理解し、尊敬できるようになります。
そうすれば自分よりも深い歴史を持つ人も「こいつ、わかってるな」と安心して胸襟を開き、その歴史の一部を自分にも見せてくれるようになります。