芸術が面白くそして怖いのは、作者はもちろん、鑑賞者の本質までたちどころに暴くところです。
例えばある本を読んだとしましょう。
その内容をクソミソにけなす人は承認欲求が高く、満たされていません。
当たり障りのない意見でやんわり褒める人は気遣いに長けているけどどこか仮面を被っています。
「最高!」「傑作!」だとベタ褒めし他人にも読め読めと頼まれてもいないのに貸してくる人はどこか支配的な性質を持っています。
「ここは好き」「でもここは嫌い」とはっきり言ってくる人はがさつだけれど表裏がない。
などなど。
音楽、絵画、漫画・アニメ、映画・演劇、各種TV番組…全てにおいて同じことが言えるでしょう。
そういった性質を普段は慎重に隠していても、芸術を介するとびっくりするぐらい簡単に露呈してしまいます。
しかも、学歴はもとより、地頭のよさや社会的地位、権力もこの芸術の作用からはほぼ逃れられません。
ときおりそういった芸術の作用を見抜き逆手に取る人がいますが、それはある種の天才なのでしょう。
私見ですが、権力者はそういった芸術の作用を比較的よく知り、恐れているので、芸術に対して二通りの接し方をするように思えます。
徹底的に離れるか、取り込むかです。
あらゆる権力機関が必ず芸術に対し何らかの賞を与えるのは後者を意図しているのでしょう。
そうして芸術と芸術家を自らの権力に取り込んでおけば暴かれる心配はなくなるからです。
これは長い歴史を通して人類の権力者が培った知恵であると僕は思います。
さて、ここまで読んできて「怖い…」「自分は暴かれたくない」と思う人は芸術に向いていません。
逆に「自分の本性を暴いてほしい」と思える人は向いています。
ある程度芸術(サブカルでも結構)に首を突っ込んでいる人は既に何度も芸術に己を暴かれて身震いしたことがあるはずです。
お前なんかこんなもんだよ
才能ないくせに何やってんの?
カッコつけたいだけなんでしょ?
恥かくのが怖いんだww
ほら、ほかのやつに嫉妬してw
お前の作品が歴史に残るとでも思ってんの?
芸術はすぐにこんなことをささやいてきます。
この声はいつまで経っても止みません。
それに耐えられないのなら芸術からはさっさと離れて暮らすべきでしょう。
とはいえ、人はなぜか芸術に一度は憧れるものです。
そうして暴かれまいとビクビクし、最大限に防御しながら芸術にちょっかいを出して痛い目を見る人がいつまで経っても絶えません。
もちろん、暴かれようとして芸術の前に自分をさらけ出しても同じくらいかそれ以上に痛い目をみますが。