音楽をやっていく上で、好きなことをとことん続けるのがいいという説はいまだに強いみたいです。
それはそれで効用もあるのですが、僕は講師の立場から「嫌いな音楽を聴け」と言い続けています。
でなければ音楽的な幅は広がらないし、細かいところでいうと、好きな音楽しか聴かないことが原因で簡単なフレーズがいつまでも弾けないということもあります。
ロックしか聴かないから16のちょっと入り組んだリズムが弾けないという人は本当に多いです。
また、物理的には弾けるけど雰囲気が出せないということもあります。
例えば、布袋さんが好きというギタリストがいるとしましょう。
布袋さんの音楽だけやりたい、だから布袋さん(BOOWY)とその周辺の音楽しか聴かない……一見これは合理的な判断だと思えます。
しかし、布袋さんとその周辺の音楽しか聴かないでいると、布袋さんのフレーズを弾き、あの雰囲気を出すことはかなり難しいでしょう。
なぜなら布袋さんのプレイのバックグラウンドには、ロック以外にファンクやテクノなど様々な音楽が含まれているからです。
それらがブレンドされ、布袋というフィルターを通した結果が彼のプレイであり音楽なのです。
だから布袋さんとその周辺だけ聴いて真似しようとしてもそれっぽくならないのは当然です。
しかし実際に、布袋さんのギターに近づきたいから彼のルーツまで研究しているという人はまれでしょう。
布袋は好き、でもファンクやテクノは嫌いだとか、よくわからんから聴かないという人の方が圧倒的に多いはずです。
自分の好きなアーティスト、目指すアーティストをコピーし研究するということは、そのバックグラウンドも当然含まれます。
それも含めて好きになれればいいのですが、「本人は好き、でもバックグラウンドは嫌い」と感じたときに、そのバックグラウンドを排除してしまうとどうしても決定的に何かが欠けてしまいます。
それでも頑固に「好き」を貫いていけばそこに何かがあるのかもしれませんが、講師の立場から言うと、嫌いだろうが何だろうが聴いてコピーしてみることを推奨しています。
そもそも好き嫌いなんて今この瞬間の曖昧な感情にすぎませんしね。