ジャズを”勉強”しはじめた人は、かなり初期の段階から間違いなくマイルス・デイビスが気になっているはずです。
何度も何度も名前を目にするし、日本では「帝王」とか呼ばれているし(この呼び方自体なんか変なんですが)、アルバムもことあるごとに紹介されています。
が、はっきりいってマイルスはジャズの入門としては向いていません。
まず最初に、マイルスのトランペットを味わうためにはある程度の年齢と音楽的素養がどうしても必要だからです。
試しに聴いてみるとわかりますが、一聴してなにがすごいのか全然わかりません。
テクニカルなことを全然やらないし、音もよく外すし、なんか吹いて途中でやめたりとかするし。
ただ、年齢と音楽体験を重ねていくとだんだんマイルスの音の中身が感じられるようになってきます。
音の奥にあるイメージの豊かさや意思の強さなどなど。
そういった意味で、マイルスの音は自分が音楽の中身を聴けているかどうかをテストするツールとして機能します。
マイルスの音にしみじみ感動できるようになれば、自分はそこそこ音楽を深く聴けていると思っていいでしょう。
あと、マイルス・デイビスの音楽(楽曲、アルバム)は常に俯瞰で認識しないと理解できないので、そのためにある程度ジャズや音楽の歴史を知っておかなくてはなりません。
そういった意味でも入門者にはちょっとハードルが高いのです。
「So What」という楽曲をただ聴いても『ふーん』としか思えないでしょうが、ジャズの歴史という観点から捉えると聴き方が全然変わってきます。
ということで、初心者はマイルス・デイビスはしばらくスルーして大丈夫です。
それでも一枚ぐらいはという方はこちらを聴いてみましょう。
収録曲の「Blue in Green」というバラードを聴いて心から感動できれば向いているのでどんどんマイルスを聴いてもいいと思います。
『うん、いや、綺麗だけど何がそんなにすごいの?』と思ったならまだ年齢と音楽体験が足りません。
ちなみに僕は27、8ぐらいでようやく心から感動できました。
はじめて聴いたときは『退屈な曲だなー』としか思えませんでしたねえ。
ガキだったから……
余談ですが、マイルスデイビス自叙伝は初心者にもオススメです。
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