ジャズでは一般的にオリジナル曲をあまり演奏しません。
もちろんそういう人もいるし、そういう作品もありますが、生涯にわたってオリジナル曲しか演奏しないジャズミュージシャンはまれでしょう。
では何を演奏するかというと、スタンダードと呼ばれる古い楽曲、あるいはポップスなどのヒット曲です。
ここで勘違いしてほしくないのは、他人が自分のために作曲してくれたものを演奏するのではないということです。
例えば作詞も作曲もしないアーティストはいくらでもいますが、彼らが歌う(演奏する)楽曲は、おおむね誰かが彼らのために書いたものです。
ジャズミュージシャンの演奏する楽曲はそうではなく、すでに存在している自分と全く関わりのない楽曲を扱います。
しかも、それを「カヴァー」ではなく、自分のものにするために演奏します(だからしばしば原曲を破壊してしまったり、原曲を越えてしまうこともあります)。
ここで、一般的な音楽ファンにはひとつの障壁が生まれます。
普通あるアーティストに興味を持ったとしたら、当然「その人の曲」が聴きたいと思いますよね?
でもジャズの場合、「その人の曲」はほとんどないのです。
そこで気持ちを切り替えて「なんだ、カヴァーが当たり前なのか」と理解したとしても、そのカヴァー曲が古すぎてひとつもわからないという事態になります。
オリジナルもほとんどない、カヴァー曲も知らない、じゃあジャズの何を楽しめばいいの? と途方に暮れてしまうのもわかります。
そこで視点を変える必要があります。
ジャズを楽しむためには、まず好きなアーティストを探すのではなく、好きな楽曲を見つけた方が広がりやすくなります。
好きな楽曲が見つかれば、次にその楽曲を演奏しているアーティストを片っ端から探します。
楽曲名で検索すればいくらでも出てくるでしょう。
そうやって、まず楽曲ありきでそれを演奏しているアーティストを知っていくとちょっとずつジャズがわかってきます。
この辺についてはまた詳しくご説明します。
とりあえず、ジャズミュージシャンが演奏する曲は全てその人のオリジナルではないということを覚えておきましょう。