ロックやポップス、アイドルなどは、予備知識がなくてもすぐに楽しめます。
しかし、ジャズはある程度予備知識がないと何が何だかわからずに挫折してしまいがちです。
とはいえ、ジャズの歴史やジャズが生まれた社会的背景を真面目に説明しようと思うとかなりしっかりしたお勉強になってしまい、つまらなくなります。
そこで、ジャズを楽しむために最低限必要なことを僕なりにまとめてみたいと思います。
言うまでもないことですが、ジャズはアフロアメリカン(アメリカに住む黒人)の音楽です。
現代では白人もヨーロッパ人もアジア人も演奏しますが、創り出したのはアフロアメリカンです。
当然、ジャズには彼ら独特の精神が細部に宿っており、そこを理解しないと楽しめない部分が多々あります(先日ご説明した<逸脱>です)。
この辺はまた実体験を元に詳しくご説明します。
余談ですが、アフロアメリカンが奴隷であった過去については正直そこまで深く見つめる必要はないと僕は考えます。
もちろん、それは歴史的事実なのですが、僕自身はジャズからそういったメッセージを受け取ったことはないし、ジャズミュージシャンも奴隷制についてそこまで深く語ってはいないと思います。
むしろ奴隷制度を深く見つめているのはレゲエとかヒップホップなど、後年の黒人音楽かブルースだと思います
そこらへんもまた書きながら考えてみたいと思います。
意外と初心者が見落としがちなのが、ジャズはロックやポップスという音楽がまだなかった時代に完成したものだということです。
ピークは1950年代です。
だから、ロックやポップスの文脈でジャズを聴くとかなり混乱します。
相当な音楽好きでもジャズは苦手だったり聴けないという理由は、無意識的にジャズをロックやポップスの文脈で聴いているからでしょう。
そういった現代の音楽(だいたい60年代以降のもの)しか聴いていない人は、ジャズの文脈(聴き方)を一度勉強しないといけないので、そこがめんどくさいところです。
初心者の方は、ジャズというと頑固で閉ざされたイメージがあるかもしれませんが、実はジャズにはめちゃくちゃ派生ジャンルがあります。
例えば、メタルにもデスメタルとかスラッシュメタル、最近ではアイドルメタル(Kawaii Metal)など数多くの派生ジャンルが生まれていますが、ジャズは歴史が長い分、派生ジャンルもめちゃくちゃ生まれています。
ですから、ファーストコンタクトがけっこう大事になってきます。
はじめて手にした”ジャズ”がマニアでも引くような内容なのに、予備知識がないために「こ、これがジャズか…」とトラウマになってしまうということはわりとよくあります。
一方で、ジャミロクワイのようないわゆるアシッドジャズが正当なジャズだと思ってしまうケースもあるでしょう。
もちろん、それが好きならそれで全然いいのですが。
このように、ジャズは派生ジャンルが多すぎるので、たまたま極端なものだけを手にしてしまって勘違いしたり、好きなものが見つけられずに挫折するというケースが多々あります。
そのためにちょっとだけ勉強しておかなくてはならないのがめんどくさいところです。
どのへんが正統なジャズか、何を聴けばいいかはいずれこのシリーズでも書きますのでご期待ください。
ロックやポップスなどは、どちらかというと固める音楽です。
アレンジ、サウンド、アンサンブルなどなどを入念なリハーサルで固めていき、他との差別化を図ります。
一方ジャズは形をどんどん崩していく傾向があります。
同じ曲でもアレンジを毎回変えたり、ソロもより抽象的に変化していったり。
この辺もやはりアフロアメリカンの精神と関係しています。
ジャズミュージシャンは崩しから生まれる音楽的ハプニングを狙い、ジャズファンはそれを目撃するために足繁くクラブに通う……というのがある種伝統的なジャズの需要と供給でした(今はもうそんなことはほとんどありませんが)。
その崩しを楽しむためには、前提として存在するルールや形式を知っておかなくてはなりません。
その辺がやはりめんどくさいところです。
と、軽く上げただけでもめんどくさそうだなと思った方も多いでしょう。
そうです、ジャズはどうしてもめんどくさいことがついてきてしまいます。
そこを抜ければたぶん面白くなってくるので、もうしばしおつきあいください。