ミュージシャンを目指す人、あるいは既に仕事をしていて、もっと上を目指している人は、だいたい状況を変えようと努力します。
もっと大手の実入りのいい教室に雇ってもらえれば、都会のシーンに進出できれば、有名人と共演すれば、インディーズからメジャーデビューできれば、そうすれば自分だって……と。
確かに、状況が好転すれば活動もより充実してくるでしょう。
しかし、そんなものは待っていてもそう都合良く訪れてきません。
そこで、状況を変えようとするのではなく、今の自分の状況を上手く利用し、ひとつ上のステップに上がることを僕は考えました。
ちなみに、そのときの僕の状況は、
・田舎住まい
・無名
・デビューなし、コンテストなどの受賞歴なし
・コネなし
と、さんざんですw
まあせいぜいアメリカの音大卒というのが売りといえば売りでしたが、それは僕自身何も期待していませんでした(そんなもんで仕事が増えると思うほど子供ではなかったので)。
ちなみに歳は20代後半。
もう、かなりヤバいですw
そこで僕がやったことは何か…
そう、教則本の執筆です。
調べてみると、音楽関係に強い出版社は、企画の持ち込みや郵送を受け付けています。
じゃあ一冊分全部書いて送ってみるか、と、執筆経験もないのにいきなり書き始めたのが「ギタリスト身体論」です。
もちろん、この時点で契約なんてないし、出版社にコネもありません。
さて、教則本の執筆にあたり僕が気を付けたのが、自分を消すということです。
というのは、この時点での自分は無名だし、何の売りもありません。
そんなやつが「こう弾け、ああしろ」と言っても誰も信用しませんよね?
そこで、「クラプトンはこういうフォームらしいよ」「SRVは腕をこう使ってるよね」「イングヴェイの腕ってこうだよね」と、著名なギタリストを例に挙げ、僕自身はその解説者というポジションを取ることにしました。
こうすることで、無名のギター講師が著書を出すということの違和感を消そうとしました。
悪く言えば、虎の威を狩りたってことですwww
これが戦略です。
結果は大成功と言えるもので、出版にこぎつけたのはもちろん、出してすぐに好意的なレビューが出て、半年で増刷されました。
そしてそれは、7年経った今でも続いていますし、この出版不況の中、増刷を続けています。
しかも、この本がきっかけで「脱力なら八幡に訊け」「フォームなら八幡の言うことをやってみろ」「ギターで悩んでいるなら八幡のブログを読んでみろ」とまで言われるようになりました。
つまり、今の状況でできることをやった結果、自分を取り巻く状況をひとつランクアップできたということです。
と、このように、ある種絶望的な状況でも、それをそのまま使ってステップアップすることができるのです。
もちろん、それで超有名になれるとか家が建つとかってほどではないですよ。
でも、確実にひとつふたつステップアップすることはできるのです。
状況さえよくなれば…と考えるのは、ある種甘えだし、発想にとぼしいと言えます。
今の状況(予算、人選、締め切り)で最高のものをつくるのがアーティストでありクリエイターでしょう。
誰でも、どんな状況でも、今のままでステップアップにつながる行動は絶対に取れると僕は思いますし、実際に実行してきています。
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