今まで出会ったミュージシャンを目指す学生の中には、かなり苦労している人もいました。
肉体労働やホステスをやってお金を貯め、その上借金して勉強しにきている人なども。
なんで知ってるかというと、そういう人たちは聞いてもいないのに自分から苦労してお金を作ったことをべらべらとしゃべるからです。
言葉の奥にはいつも「自分はお前とは覚悟が違う」といったニュアンスがたっぷりとこめられていました。
一般的に、日本人はこういった苦労人が大好きです。
そして、彼らこそが将来成功する、そうあるべきだと信じています。
しかし、実際、卒業後に彼らの名前を聞くことは一度もありませんでした。
それこそ、SNSでも見かけないレベルなので、音楽自体やめているのかもしれません。
そして、どっちかっていうと余裕かましてた人の方が後に活躍するという逆転現象が起こっています。
学生時代、何も弾けず、ずぼらで遊んでばかりいて(そのように見えた)みんなから蔑まれていたやつが、今やNYでトップアーティストと呼ばれていたりします。
まあそれは極端な例ですが。
苦労して底辺から這い上がるといったお話は、結局そういった例が極端に少ないから面白いのでしょう。
実際にはほとんど聞かないし、我々が耳にしている時点で相当美化されているはずです。
また、僕が出会った苦労している人たちは、言葉の端に必ずイヤミや当てこすりが含まれていて、話していて嫌な気分になることが多かったと記憶しています。
だから距離を置いたし、周りもそうでした。
その結果の今なんでしょう。
彼らがそういった卑屈さを見せず、いつも笑顔でポジティヴに頑張っていたら、また結果は違っていたのかなとうっすら思います。
とはいえ、苦労は概ね人を卑屈にさせるものですが……